#60歳で貯蓄100万円未満が3割とのアンケート結果も‼「働き続ける老後」を見据えて、今すべきこと

「老後資金には2,000万円必要」と言われて久しい昨今。しかし現実には、60歳を迎える人々の経済状況はますます厳しさを増しています。2025年3月にPGF生命が実施した1965年生まれの男女2,000人を対象に行った調査では、「貯蓄が100万円未満」という人が30%を超えていました。中央値も475万円にとどまり、「老後2,000万円問題」がより現実味を帯びています。

一方で、内閣府の調査によると、60歳以上で仕事をしている人の割合は、2019年の37.3%から2024年には42.7%にまで上昇。多くの高齢者が、「物価上昇」「収入・貯蓄の不足」「老人ホームの入居費」など将来への不安を抱えながら、働き続ける道を選んでいるのが実情です。

老後に必要な資金は、年金の種類や住まいの形態によって大きく異なります。例えば、地方都市に暮らす60歳の夫婦(夫は40年間勤務、妻は専業主婦)の場合:

【60歳から85歳まで、25年間の老後に必要な資金】
◆持ち家(ローン完済)の場合
・厚生年金受給:836万円
・国民年金受給:3,661万円

◆賃貸(家賃月8万円)の場合
・厚生年金受給:2,707万円
・国民年金受給:5,532万円

このように、「住まい方」と「働き方」が、老後の暮らしを大きく左右し、また生活スタイルによっても、老後資金の「適正額」は大きく変わってきます。

私自身の体験:貯蓄が少しあっても安心できなかった
私は56歳で早期退職し、退職金に割増もあったため、60歳時点の貯蓄額は平均を上回っていました。しかしその後、自然栽培茶の事業を起業しようと、店舗改装やWEBなどに多額の初期投資を行ったことで、資金は急激に減少しました。

健康や環境にこだわった商品ではあったものの、ECモールの手数料・広告費・発送費といった間接費が重くのしかかり、粗利率は約10%まで低下。扱い量が増えるほど負担も増すという、まさに「利益が追いつかないジレンマ」に陥りました。さらにはコロナ禍が追い打ちとなり、最終的には撤退という苦渋の決断を下しました。

この経験から学んだのは、「原価率が高く、初期投資の大きい事業は避けるべき」という基本中の基本です。安定収入(再雇用や年金)とのバランスを考えながら、低リスクで持続可能なビジネスモデルを選ぶことの大切さを痛感しました。

小さなビジネスで「反転」をつかんだ
その後は、テナント運営とコンサルティング業に軸足を移しました。これらは初期投資が少なく、自分の経験や人的ネットワークを活かしやすいため、収益化しやすい分野です。また、以前は外注していたホームページ制作(3年間で約250万円)も自前で対応するようにし、年間維持費を約5万円まで削減。こうした工夫によって、事業を無理なく継続できるようになりました。

起業から最初の4年間は、預貯金を取り崩しながらの運営でしたが、65歳を過ぎた頃から事業もようやく安定し、年金受給も始まり、ようやく「反転」の兆しが見え始めました。

起業には「定年」がないという安心
正直に言えば、私自身、セカンドライフを計画的に準備していたわけではありません。それでも、小さな起業を通じて収入の柱を育てることで、精神的な安定を得ることができています。
何より大きかったのは、「起業には定年がない」という事実です。自分の裁量で働き方を選べる自由は、想像以上の安心感とやりがいをもたらしてくれました。

唯一の後悔があるとすれば、「もっと早く、50代のうちに準備を始めておけばよかった」ということです。WEBスキルや集客のノウハウ、補助金の活用方法など、起業に必要な知識は一朝一夕では身につきません。少しずつでも準備をしていれば、もっとスムーズに軌道に乗せられたはずだと、今でも感じています。

「小さく始めて、長く続ける」支援を目指して
現在は、これまでの経験――テナント運営、小売業、自然食品通販、企業コンサルティング、そして数々の失敗――を活かして、60歳以降の起業や小さなビジネスに挑戦したい方々の支援に力を入れています。ホームページ制作やSNSの活用など、インターネットスキルも共有しながら、「小さく始めて、長く続ける」ための伴走者として、多くの方の背中を押せたらと願っています。

60歳時点で貯蓄に不安があっても、健康であれば収入を持続できる「小さな起業」は、人生を再構築するための有力な手段です。潤沢な資金がなくても、経験と知恵を活かせば、道は必ず拓けます。そして何より、「たとえ小規模でも事業が持続すれば収入も生涯現役で続いてくる」という事実が、心の支えになります。
小さな起業を通じて、好きなことや得意なことを活かしながら、自分らしい人生を歩み、社会と繋がり続けるシニア起業家が一人でも多く増えていくことを、心から願っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次