近年、「70歳代で自己破産する人が増えている」というニュースが注目されています。高齢者の破産件数は2010年代以降じわじわと増加し、自己破産者の中で60〜70代が占める割合は年々高まっています。背景には、年金だけでは生活が成り立たない現実、医療費や介護費の負担増、そして定年後の働き方の変化があります。
特に深刻なのは、70歳前後の生活の落差です。多くの人が「65歳で定年→再雇用で何とか収入を繋ぐ」形で働いています。しかし、再雇用の終了が見えてくる70歳前後は、人生の大きな転換点です。ここで収入が大きく落ち込み、その落差を埋められないまま老後生活に突入してしまう人が少なくありません。
日本は「人生100年時代」と言われるようになりました。100歳まで生きる可能性を前提にすると、70歳からの30年間は決して“余生”ではなく、ひとつの独立した人生区間だと言えます。しかし、その30年をどう生きるかについては、社会全体がまだ十分に理解できていないのが現状です。
70歳までの道のりは、いわば“猶予期間”です。定年延長制度や再雇用制度、契約社員としての継続雇用などにより、多くの人が70歳までは何とか収入を確保できます。企業側も人手不足や制度改革により高齢者雇用を進めています。しかし、この雇用機会は永遠ではありませんし、その収入がいつまでも続くわけではありません。
本当の勝負は、70歳以降をどう生き抜くかです。そして、その力をつけるのは70歳になってからでは遅いのです。
40代・50代こそが、老後の土台づくりのゴールデンタイムです。体力もまだあり、仕事の経験値も高まり、社会とのつながりも維持しやすい年代。さらに、人生後半を見据えた「逆算の人生設計」を具体化できる年代でもあります。
まず必要なのは、定年以降の収入計画です。
年金だけで生きていくのは、現実的にはかなり厳しい時代になっています。生活費、住宅修繕、子や孫へのサポート、旅行、趣味。これらを年金だけで賄うことは困難です。さらに、老後のどこかで発生する介護費や医療費は大きな負担となり、自己破産に追い込まれる要因の上位にも入っています。
だからこそ、年金以外に「70歳以降も続く収入源」を早い段階から準備しておくことが重要になります。
収入源は多様です。
小さく働くこと、退職後に続けられる副業、地域の仕事、資格を活かした活動、自宅を活用したサービス提供など、形はさまざまです。その中でも、スモールビジネスや個人でできる小規模起業は、初期投資が少なく、経験や強みを生かせる現実的な選択肢として注目されています。
収入源を複線化しておくことで、70歳以降の不安は大きく減ります。これは単なるお金の話ではありません。
働くことは、社会とつながりを持ち続けることでもあり、孤立のリスクを避け、健康維持にもつながります。人生後半の幸福度は、収入と社会参加で大きく左右されると言われています。
40代・50代のうちに、
「70歳からの30年間を具体的にデザインする」
この視点を持つことで、人生の後半戦は大きく変わります。
定年延長は、社会が与えてくれた“猶予期間”です。
でも、その猶予はいつか終わります。
本当に大切なのは、猶予の後の30年をどう生きるか。
70歳以降を生き抜く力は、70歳になってから身につくわけではありません。
いま、40代・50代から育てていくものです。
わたしは現在60代後半です。人生100年時代という新しい現実の中で、早期退職し独立という道を選びました。しかし、正直に言えば、40代・50代の頃は仕事に追われ、「70歳からの人生」を深く考える余裕はありませんでした。気づけばあっという間に60代を迎え、七転八倒しながら自分の居場所や働き方を作り直す日々でした。
――もしあの頃、40代・50代のうちに“70歳からの30年”をイメージ出来ていたら、もう少し余裕をもって人生設計が出来ていたのではと思う昨今です。

