丙午の年に、あらためて「火」を扱うということ――2026年、仕事と人生の再点火――

2026年は、丙午(ひのえうま)の年になります。
丙午と聞いて、どこかざわついた空気を感じる方もいるかもしれません。1966年の丙午は出生数が激減し、「丙午の女性は気性が激しく夫を食い殺す」などという、今となっては根拠のない迷信が社会に影響を与えた年として知られています。

しかし、干支を冷静に読み解いてみると、丙午とは本来「強い火」を意味しています。
丙は十干の中でもっとも勢いのある陽の火です。午もまた火性を持っています。つまり丙午とは、火が火を呼び、燃え盛るエネルギーを象徴する年なのです。

火は、扱いを誤れば危険です。しかし、正しく使えば、料理をし、鉄を鍛え、闇を照らし、人を前に進ませます。2026年は、まさにこの「火との付き合い方」が、仕事や人生の質を大きく左右する年になるでしょう。

仕事や起業の場面では、丙午の火は「衝動」や「勢い」として現れやすくなります。
急に何かを始めたくなることもあるでしょう。長年温めてきた構想に、突然スイッチが入ることもあります。あるいは、これまで我慢してきた環境から抜け出したくなるかもしれません。こうした感覚は、決して悪いものではありません。むしろ、停滞を打ち破るための貴重な初動エネルギーだと言えます。

ただし同時に、火は燃料を選びます。
感情だけを燃料にすれば、火は暴走します。怒りや不満、焦りだけで起業すれば、資金も人も焼き尽くしかねません。一方で、経験や準備、生活設計といった「乾いた薪」をくべれば、火は長く、安定して燃え続けます。

人生後半における起業や働き方の見直しは、まさにこの薪選びが重要になります。
若い頃のように、体力や時間を無尽蔵に使えるわけではありません。だからこそ、自分の経験、資格、人脈、失敗談といった「これまで生きてきた証」こそが、最良の燃料になるのです。

丙午の年は、「何者かになろう」と背伸びをするよりも、「自分がすでに持っている火種は何か」を見極める年だと言えます。
派手さはなくても、誰かの役に立った経験。困難を乗り越えた記憶。家族を支えた時間。そうしたものは、見方を変えれば立派な仕事の種になります。

また、火は一人で燃えるよりも、囲炉裏のように人を集めるときに、もっとも意味を持ちます。
2026年は、競争よりも共助、拡大よりも持続が鍵になります。大きく稼ぐことより、長く続くこと。ひとりで抱え込むより、小さくつながること。そうした選択が、結果的に人生を安定させてくれるでしょう。

丙午は「強すぎる」と恐れられてきましたが、それは火の扱い方を知らなかった時代の話です。
火を恐れる必要はありません。ただし、敬意を払う必要はあります。

2026年。
もし心のどこかに、小さな違和感や、くすぶる思いがあるなら、それは火種かもしれません。消すのではなく、見つめ、整え、必要な分だけ灯してみてください。仕事も起業も人生も、そのくらいがちょうどいいのです。

丙午の火は、壊すためのものではありません。次の道を照らすためにあります。
静かに、しかし確かに、自分の足元を照らす一年にしていきたいものです。

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