1万7,875人。2025年、上場企業における#早期・希望退職の募集人数です。前年から 78.5%増 という大幅な増加となりました。

この水準は、リーマン・ショック後の雇用調整が続いた2009年以降で 3番目の高水準 であり、東日本大震災直後の2012年(1万7,705人)をも上回っています。
本調査結果は、東京商工リサーチが2026年2月に発表したデータ に基づくものです。

募集を行った企業数は 43 と、前年の57社から減少しました。しかしこれはリストラの沈静化を意味するものではありません。
実際には、1社あたりの募集人数が拡大しており、少数の企業による大規模な人員調整 が進んでいることが分かります。
パナソニックホールディングスの 約1万2,000人規模、三菱電機の 約4,700人 という数字は、その象徴と言えるでしょう。

特に注目されるのが、いわゆる 「黒字リストラ」 の増加です。
早期・希望退職を実施した企業の 67.4 は最終赤字ではなく、黒字企業でした。
足元の業績不振による人員削減ではなく、将来の事業転換や競争力維持を見据えた 戦略的な構造改革 が主な背景となっています。
これは、日本企業が「業績が悪化してから人を減らす」のではなく、「余力のあるうちに組織を作り替える」段階に入ったことを示しています。

業種別に見ると、パナソニックHDやジャパンディスプレイなどを含む 電気機器産業が全体の約4割 を占めています。
デジタル化やAI導入、EV関連技術への転換などにより、従来型の事業や組織構造が急速に見直されており、製造業を中心に人員構成の再編が進んでいます。

年齢構成に目を向けると、募集対象の多くは 40代後半から50代後半の管理職・ベテラン層 です。
豊富な経験と専門性を持つ一方で、人件費が高く、ポスト不足や役割の再定義が難しい世代が、構造改革の対象になりやすい現実があります。
これは個人の能力不足ではなく、「年齢構成と組織設計のミスマッチ」が生んだ問題だと言えるでしょう。

ここで見過ごせないのが、これらの退職者が 今後、中高年労働市場に一斉に参入する という点です。
すでに中高年層の再就職市場は、賃金水準の低下、非正規雇用の増加、職種の限定化といった課題を抱えています。
そこに、管理職経験や専門職経験を持つ大量の人材が流入することで、競争はさらに激化し、就労環境は一層厳しくなる ことが予想されます。

特に、同世代・同属性の人材が短期間に市場へ放出されることで、「条件を下げなければ働けない」「希望しない職種への転換を余儀なくされる」といった状況が広がる可能性があります。
これは個人の努力だけでは解決が難しく、構造的な問題として捉える必要があります。

今回の調査結果が示しているのは、単なる雇用調整の動向ではありません。
企業に依存したキャリアモデルの限界と、人生後半の働き方を再設計する必要性 が、数字として表面化したものだと言えます。
黒字企業であっても人員構成を見直す時代において、働く側もまた、会社の枠組みを前提としない生き方・働き方を考える局面に入っています。

2025年の早期・希望退職の急増は、日本社会が 中高年の雇用と生き方を本格的に問い直す転換点 に差しかかっていることを、強く示唆しているのではないでしょうか。

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