起業家は「つり革」を掴まない⁈ ― 毎日の通勤電車から見える“未来の握り方”

朝の満員電車。人の流れ、時間、速度——すべてが決められたリズムの中で進んでいきます。手元には当たり前のようにある「つり革」。丸型、三角型、縦配置や横配置など、実は多様なのに、その違いに気づくことは少ないでしょう。鉄道会社の歴史や考え方が反映された、意外に奥深い存在です。

名前の由来は、かつて本当に“革”の輪を吊るしていたことから。「吊り革」という言葉だけが今も残り続けている。日常で当たり前に触れているのに、実はよく知らない。この距離感が、つり革の面白さと言えるかもしれません。

しかし今日お伝えしたいのは、つり革そのものの話ではなく、「つり革を掴む」という行為が、私たちの生き方とどう関わっているか、という話です。

電車で立つと、多くの人が反射的につり革に手を伸ばします。安定したいから、揺れに備えたいから——それは自然な行動です。でも、毎日同じ時間、同じ車両、同じつり革を握っていると、気づかないうちに行動も視野も“固定されていく”ことがあります。

そこでよく聞くのが、「起業家はつり革を掴まない」という比喩です。もちろん実際に掴まないわけではなく、“掴めば楽だが、掴むと自由が妨げられるもの”から距離を置く、という意味です。つり革を掴めば安定するけれど、動きにくくなる。視野も狭くなる。一方、掴まずに立てば、不安定ではあるものの、体幹が鍛えられ、空間全体を感じ取れるようになります。

仕事や人生も同じではないでしょうか。

「今の仕事のほうが安心だから」「変化は怖い」「年齢的にもう遅い」
これらは、心にある“見えないつり革”と言えるかもしれません。それを強く握っていると、環境が揺れたとき、本来行きたい方向があっても身動きが取りづらくなる。

でも、もし心のどこかで、「このままでいいのか」「もう少し違う方向に進みたい」と感じているなら、一度、自分の手元を見てみてください。未来のチャンスを掴むために手を空けているか。それとも、慣れ親しんだつり革を無意識に握り続けていないか。

もちろん、いきなり手を離す必要はありません。起業とは無謀に飛び込むことではありません。むしろ、今の仕事を続けながら、得意なことを整理し、小さく試し、固定費を抑え、インターネットでできることを増やしていく。こうして“片手を空ける準備”を進めることで、手を放すタイミングは自然と見えてきます。

揺れる電車で手を離すと、最初は不安定です。でも、人は必ずバランスを取ろうとする。足腰が自然と強くなり、視野が広がり、周囲の動きにも敏感になります。起業準備もまったく同じで、つり革を離した者だけが見える景色が必ずあります。

今日も電車は走ります。人々を職場へ、自宅へ、それぞれの目的地へ運んでいくなかで、
あなたの手は未来を掴むために空いている派でしょうか?
それとも、慣れ親しんだつり革を握りしめている派でしょうか。

つり革を握るか、未来を掴むか。
その選択は、いつでもあなた自身の手の中にあります。

写真は東急世田谷線の「招き猫」ラッピング車両のつり革で、沿線の豪徳寺が招き猫に関する由来で「発祥の地の一つ」として知られており、猫のペイントはその車両・沿線の目印になっています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次