業績が悪くないにもかかわらず、大企業が早期退職や希望退職を募る、いわゆる「黒字リストラ」が目立っています。東京商工リサーチによりますと、昨年リストラを公表した上場企業42社のうち、67%にあたる28社が黒字企業で、対象人数は1万人を超えました。対象年齢は50歳以降が中心で、就職氷河期世代を含む中高年層が事実上の標的となっています。
企業側は「成長のため」「人員構成の是正」「国際競争力の強化」といった理由を挙げています。三菱ケミカルやパナソニックホールディングスの事例を見ても、赤字だから人を減らすのではなく、黒字のうちに構造改革を進めるという考え方が主流になりつつあることが分かります。退職金の上積みや再就職支援をセットにした制度は、企業にとっては“今だからできるリストラ”であり、中高年人材の新陳代謝を促す仕組みとも言えるでしょう。
しかし、個人の立場から見ると状況は決して楽観できません。50代は住宅ローンや子どもの教育費、親の介護といった支出を抱えやすい世代です。その一方で、再就職市場では年齢の壁に直面しやすく、必ずしも有利とは言えません。黒字リストラは表向きには「選択肢」として提示されますが、実際には準備ができていない人ほど厳しい判断を迫られる構造になっています。
だからこそ、人生100年時代を前提に、働き方や人生設計を根本から見直す必要があります。50代で「会社に残る」という選択も、「早期退職を選ぶ」という選択も、どちらを選んでも後悔しないためには、主体的に判断できる準備が欠かせません。その準備は、40代のうちから始めることが重要です。自分のキャリアを棚卸しし、会社名や肩書きがなくなったときに何が残るのかを考えておく必要があります。
私自身、かつて広告会社に勤めていました。SNSメディアの台頭によって業界の構造が大きく変わっていくのを目の当たりにし、「このまま同じ仕事を続けて、10年後も社会とつながっていられるのだろうか」と自問自答するようになりました。人生100年と言われる時代において、定年まで会社に守られるという前提は、もはや当たり前ではありません。むしろ、できるだけ長く社会と関わり続けるために、会社の外でも通用するスキルや役割を持つことが必要だと感じました。
黒字リストラは、企業にとっては経営上の判断ですが、個人にとっては人生の大きな分岐点です。突然その選択を突きつけられて慌てるのではなく、「いつか起こり得るもの」として心構えをしておくことが大切です。その準備とは、資格を取ることや副業を始めることだけを意味するものではありません。自分の経験をどう活かし、どのような形で社会と関わり続けたいのかを、時間をかけて考え抜くことです。
40代50代は、そのための重要な準備期間と言えるでしょう。突然 選ばされる立場になるのではなく、自分で選べる状態で迎えること。その意識の差こそが、人生100年時代を柔軟に乗り越えられるかどうかを大きく左右するのではないでしょうか。

