「実家、どうするつもり?」——
こんな言葉にドキッとしたことはありませんか?
親が高齢になり、施設に入居した、あるいはすでに亡くなった。実家は空き家のまま、年に一度お盆や法事のときに訪れるだけ。けれどそのまま放置していると、固定資産税の負担や、草木の管理、災害時の倒壊リスク、近隣トラブル、相続人同士の揉め事など、「実家の問題」がまるで時限爆弾のようにのしかかってきます。
かつて「土地神話」と呼ばれた時代には、不動産は持っているだけで資産価値が上がると信じられていました。しかし今は状況が一変。特に過疎地域や地方の空き家・土地は“負動産”と呼ばれ、所有しているだけで損をするケースが増えています。
だからこそ、まだ自分が動ける50代のうちに考えておくことが大切なのです。
放置リスク①:固定資産税と管理コスト
たとえば、誰も住まなくなった実家でも、土地や家屋には固定資産税が毎年かかります。建物が老朽化して倒壊の危険がある場合、自治体から「特定空き家」に指定されれば、住宅用地特例が外れ、税額が最大6倍になることも。
さらに庭木の剪定、郵便物の管理、防犯対策などの「見えない出費」も積み重なり、所有するメリットがどんどん薄れていきます。
放置リスク②:相続トラブルと共有名義の地獄
親の死後、兄弟姉妹で「とりあえず共有で相続」というパターンも多いですが、共有名義は非常に扱いづらいのが現実。売却や解体、活用をするにも、全員の同意が必要で、ひとりでも反対すれば前に進みません。
さらに、そのまま次の世代に引き継がれれば、相続人が増え続けて数十人の共有状態になることも。これはもう、泥沼のトラブル予備軍です。
解決策①:自治体の空き家相談窓口を活用しよう
多くの自治体では、空き家対策として相談窓口を設置しています。実際にわたくしも、実家がある地方都市の役所に問い合わせたところ、以下のようなサポートが受けられました:
- 無料の専門家相談(司法書士・建築士・宅建士など)
- 空き家バンクの登録案内
- 解体費用の補助制度(自治体による)
まずは「空き家対策課」や「地域整備課」などに連絡し、自分の実家がどんな状況かを知ることが第一歩です。
解決策②:小規模宅地等の特例を知っておく
「相続はまだ先」と思っていても、親が他界したあとに慌てないために知っておきたいのが、「小規模宅地等の特例」という制度です。
これは、一定の条件を満たせば、土地の評価額を最大80%減額できるというもので、相続税を大幅に軽減できます。条件の一例は以下の通り:
・被相続人が居住していた土地である
・相続人がその土地を引き続き居住用に使う場合など
※条件はやや複雑なので、早めに税理士等に確認を。
解決策③:思い切って“手放す”という選択肢も
「売れない」「使えない」と思っていた土地でも、アイデア次第で活用の道が開けることもあります。
- 駐車場や資材置き場として貸す
- 地域の農家や事業者に無償で貸与(草刈りもしてくれる場合あり)
- コミュニティスペースや体験型施設に転用(地域と連携)
- 売却困難な場合は、**「相続土地国庫帰属制度」**を検討(ただし条件あり)
重要なのは、「何もせず放置しない」ことです。
まとめとして:50代だからできる“出口戦略”を
写真は長崎県平戸市の実家です。わたしは少し遅めの60歳に入ってから市役所との返納交渉、農地中間管理事業の活用、親戚への譲渡等少しずつ処分していますが、まだ半分ほどの土地が残り固定資産税を納付し続けています。
実家や土地の問題は、誰かがいつか向き合わなければならない現実です。だからこそ、自分自身がまだ元気で判断力がある50代の今こそ、最も冷静に戦略を立てられるタイミングです。
- 家族や兄弟と「実家どうする会議」を開いてみる
- 専門家のセカンドオピニオンを受けてみる
- 利活用できるならトライ、できないなら手放す方向で考える
「誰も使わないけれど、捨てられない」実家。
それを“価値あるもの”に変える鍵は、他の誰でもない、自分自身の早めの行動にあります。
何もしなければ、いずれその重荷は、実家に縁の薄い子どもたちへと引き継がれてしまうかもしれません。
“負動産”を未来に残さないために――今、動き出すことが大切です。