「女性の美と食べることに関するビジネスは不況知らず」──この言葉は、日本マクドナルド創業者・藤田田氏がたびたび語った「女性・子ども・老人を相手にする商売に不況はない」という考え方を端的に表したものです。

2025年11月10日、資生堂が赤字決算を発表したというニュースは、多くの人にとって「時代が変わった」ことを実感させる出来事だったと思います。

「不況知らず」神話の崩壊──人生100年時代の働き方設計
化粧品業界は長らく安定業種の代表とされてきました。景気が悪くても「口紅効果」と呼ばれる現象があり、小さな贅沢への需要は消えないと信じられていました。
しかし今、消費の中心は“所有”から“意味”へ、“見た目”から“心地よさ”へと大きくシフトしています。
コスメよりも「健康」「心」「サステナビリティ」に価値を見いだす時代。
つまり、藤田氏の名言が通用しないほど、社会の前提そのものが変わったということだと思います。

■「常識」が通用しない時代に、何を頼りに生きるのか
この変化は企業に限らない。
かつては「大企業に入れば一生安泰」と言われましたが、今ではその安定神話もすでに崩壊しています。
定年延長や再雇用制度が整っても、実際の職務は限定的で、給与水準は現役時代の半分以下というケースも珍しくありません。
寿命は100年に近づく一方で、会社の寿命は30年とも言われています。
もはや「会社に人生を預ける」という発想自体がリスクとなりつつあります。

では、どうすれば・・・。
答えは“自分という会社”を持つことだと思います。
つまり、個人が自らの経験・スキル・人脈を資本として、小さくても継続的に価値を生み出す「小規模起業」的な働き方を設計することだと思います。

■セカンドライフを睨んだ三つの準備
50代からの人生設計では、次の三つの準備が鍵になると思います。

① 収入の「柱」を複数持つ 
給与一本に依存しない。
兼業・副業・リスキリング・資格取得などを通じて、自分の経験を活かせる小さな収益源をつくる。
たとえば、介護・教育・地域支援・オンライン相談などは、初期投資が少なく、社会的意義も高い。
「月3万円の副収入」があるだけで、心理的な安心感は大きく変わります。

② 自分の「棚卸し」をする
これまでのキャリアで培った知識や人脈、得意なこと・好きなことを言語化しておく。
会社名を外した「素の自分」で何ができるかを見つめ直すことが重要です。
人に喜ばれた経験、相談されること、趣味で没頭できること──そこに次の仕事の種が眠っています。

③ 「生活費」を設計し直す
起業や独立を考えるとき、収入よりも大切なのは“支出の構造”です。
現役時代の生活水準をそのまま維持しようとすれば、いくら収入があっても足りません。
持ち家の維持費、親の介護費、子の独立支援──これらを見通して「どれくらいの生活で幸せか」を明確にすることが、人生設計の第一歩となります。

■「働く」ことの意味が変わった
資生堂の赤字は単なる経営問題ではなく、私たちの価値観の変化を映す鏡でもあります。
「美しく見せる」よりも「自分らしく生きる」。
「モノを持つ」よりも「心が満たされる」。
この潮流の中で、仕事もまた「生活のため」から「人生を表現する手段」へと変わりつつあります。

誰かに雇われることだけが働くことではない。
自分の経験を誰かの役に立てること──それも立派な仕事。
会社に依存するのではなく、社会の一員として貢献し続ける力を持つこと。
それが、人生100年時代をしなやかに生きるための新しい「安定」のかたちではないでしょうか。

■中堅世代へのメッセージ
今の中堅世代の方々に伝えられるとすれば、「将来のための貯金」はお金だけではないということです。
経験、人脈、スキル、健康、信用──これらはすべて“未来資産”になります。
転職や副業を通じて、できるだけ早く「自分の名刺で仕事ができる」状態をつくっておく。
それが50代、60代になったとき、何よりの安心になると思います。

■おわりに
資生堂の赤字は、一つの時代の終わりを告げるサインかもしれません。
しかし、終わりはいつも新しい変化の始まりでもあると思います。
「常識」が通用しなくなった時代こそ、誰もが自分の常識をつくれるチャンスだと思います。
働き方も、暮らし方も、人生も──他人のレールではなく、自分の設計図で生きる。
それが、これからの100年時代を豊かに過ごすための最大のヒントであると考えます。

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