年収1,000万円を一つの目標として意識する人は少なくありません。いわゆる「1,000万円プレイヤー」です。では、実際にどれほどの人がこの水準に到達しているのでしょうか。
日本全体の就労人口を見ると、年収1,000万円以上の給与所得者はおよそ 6.2%(令和6年度)。割合にすれば 約16人に1人 であり、決して一般的とは言えない、限られた高所得層であることが分かります。
男女別に見ると、男性は約 9.8%、女性は 1.6% と大きな差があり、高所得層が依然として男性中心である現実も浮き彫りになります。
一方で、日本の平均給与は 約470万円前後 とされています。
「平均」と聞くと、もう少し高い印象を受ける方も多いのではないでしょうか。実感とのズレを生む要因の一つが、平均値という指標の特性です。
平均給与で見ると、日本は世界のどのあたりなのか
では、日本の給与水準を世界の主要国と比較すると、どの位置にあるのでしょうか。
購買力平価(PPP)ベースで主要10か国を比較すると、アメリカは 約8.2〜8.3万ドル と突出して高く、ドイツ、カナダ、オーストラリアがそれに続きます。
日本は 約4.6〜4.9万ドル。中位からやや下位に位置し、G7の中では下位グループに属します。
冷静に見れば、「先進国の中で高いとは言えない」という評価になるでしょう。
しかし、ここで注意すべきなのが、「平均給与」という数字そのものです。
実感に近いのは「中央値」
平均値は、一部の高所得者によって押し上げられやすく、必ずしも「多くの人が感じている現実」を反映しません。そこで重要になるのが 中央値(メディアン) です。
中央値とは、所得を低い順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する人の所得を指します。
言い換えれば、「最も典型的な働き手の年収」を示す指標です。
この中央値で世界主要国を比較すると、状況はさらに明確になります。
- アメリカ:約 19,300ドル
- カナダ:約 18,650ドル
- ドイツ:約 16,800ドル
- 日本:約 14,250ドル
日本はイギリスや韓国と同水準、あるいはやや下回る位置にあり、中央値で見ても主要国の中で低位グループに属しています。
「失われた30年」と目標水準のズレ
この結果を見て、多くの人が思い浮かべるのが「失われた30年」ではないでしょうか。
バブル崩壊以降、日本では賃金がほとんど伸びなかった一方、アメリカでは賃金水準が上昇し、格差を広げながらも高所得層が大きく引き上げられてきました。
その結果、アメリカでは平均給与が日本円換算で 約1,000万円相当 となり、「年収1,000万円」という数字の意味合いそのものが、日本とは大きく異なっています。
ここで一つの仮説が浮かびます。
日本で「1000万円プレイヤー」という言葉が特別視されていますが、本来はその水準は1500万円程度で語られるべきだったのではないだろうかと。
日本にはいわゆる「失われた30年」があり、その間に賃金や経済全体がほとんど成長できませんでした。さらに、非正規雇用者の割合は2023年時点で約4割にまで達しており、非正規の賃金は正社員の約6割~7割に留まり社会的問題になっています。
これから日本は取り戻せるのか
では、日本はこの「失われた30年」をこれから取り戻せるのでしょうか。
賃上げの動きは見られるものの、世界水準に一気に追いつくほどのスピード感があるとは言い難いのが現実です。
その中で、個人が取れる現実的な選択肢を考える必要があります。
超高齢社会に向かう日本では、定年までの勤務年数だけで取り返すのは難しい。
それであれば、70歳、75歳まで働く期間を延ばし、人生全体の収入総額でカバーするという発想も一つの答えではないでしょうか。
人生100年時代。社会とつながり続け、年金を補完しながら生きるという選択です。
本業 × 起業という現実解
その一つが、本業と起業の二足の草鞋という考え方です。
本業を土台にしながら、副業や小規模起業で収入源を複線化する。これは、「失われた30年」を定年後の20年あるいは30年でリカバーする、極めて現実的な戦術ではないでしょうか。
特に日本では、スモールビジネスやマイクロ起業の初期コストが下がり、個人の知識や経験を商品化しやすい環境が整ってきました。
収入を一本足で考える時代から、複数の柱で支える時代へ。
中央値が示す「普通の年収」が伸びにくい時代だからこそ、個人の選択がこれまで以上に重要になっています。
年収1,000万円という数字の意味
年収1,000万円という数字は、もはや単なる金額目標ではありません。
それは、「どう働き、どう稼ぎ、どう生きるか」を問い直す、象徴的なラインなのかもしれません。
皆さんは、この現実をどのようにお考えでしょうか。

