#年金の繰り上げ・繰下げ:いつもらう?得するタイミングとは?

「年金って、60歳からもらえるって聞いたけど、本当?」「65歳より遅くもらうと得なの?」そんな疑問を持っている人は多いと思います。
日本の公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、原則として65歳から受け取ることになっています。しかし、60歳から70歳までの間で受給開始時期を選ぶことができるのです。これを「繰り上げ受給」「繰下げ受給」といいます。
※2022年の法改正で、繰下げ上限が70歳→75歳まで延長されました。

それぞれの特徴と、メリット・デメリットを見ていきましょう。

1. 繰り上げ受給とは?(60~64歳で前倒ししてもらう)
繰り上げ受給とは、本来65歳からもらえる年金を、早めに(60歳〜64歳)から受け取り始めることです。

メリット:
早くお金が入る!
60代前半で収入がない、または働けなくなったときに助けになります。
生きているうちに確実にもらえる
万が一短命だった場合、早くもらっていた方が「払い損」になりにくいという考え方もあります。

デメリット:
配偶者加給年金・振替加算に制限が出ることも
繰り上げによって、他の年金の受給資格に影響する場合もあるため注意が必要です。
一生ずっと減額されたまま
1か月早めるごとに0.4%減額され、たとえば60歳から受け取ると24%減額されます。
途中でやめられない
一度繰り上げを決めると、後から変更はできません。

2. 繰下げ受給とは?(66~75歳で遅らせてもらう)
繰下げ受給とは、65歳からの受給を後ろにずらす(66歳〜75歳)ことで、年金額を増やす制度です。

メリット:
受給額が増える!
1か月繰り下げるごとに0.7%増額され、最大で84%増額(75歳まで)されます。
長生きすればするほどお得
年金は一生もらえるので、長寿なら繰下げのほうが「総額」でも得になる可能性が高いです。

デメリット:
受け取り開始が遅くなる
たとえば70歳まで遅らせた場合、65〜69歳までの5年間は年金収入がゼロになります。
万が一、早く亡くなったら損になる
受け取りが遅い分、生涯で受け取る総額が少なくなる可能性があります。
高齢での生活設計に注意が必要
医療費や介護費用などが増える時期と重なるため、他の収入源(貯蓄、就労収入)が必要です。
年金受給額が増えると所得税、住民税、社会保障料が増えます。

3. 繰り上げ・繰下げの損得はどこで決まる?
簡単に言えば、「いつまで生きるか」がカギになります。

  • 一般的に、77〜78歳ごろが損益分岐点です。
    たとえば60歳で繰り上げてもらうと、早くからもらえますが、年額が減るため、77歳ごろを超えて長生きすると繰下げの方が得になります。
  • 逆に、健康に不安がある人や、すぐにお金が必要な人は繰り上げのほうが向いているとも言えます。

4. どちらを選ぶべきか?判断のポイント
繰り上げ・繰下げの判断は、「老後の生活設計」によって大きく変わります。以下の観点から考えると良いでしょう。

判断材料繰り上げ向き繰下げ向き
健康状態不安がある健康で長生きしそう
貯蓄状況少ない十分ある
収入の有無他に収入がない働いている、退職金や不動産収入がある
家族構成単身・短命傾向配偶者が長生きしそう
精神的安心感早くもらいたい将来への備え重視

5. 最近の制度変更と注意点
2022年の法改正で、繰下げ上限が70歳→75歳まで延長されました。75歳まで繰り下げると、最大で84%増額になります(ただし年金の繰下げ上限の対象範囲に注意)。
また、一部繰下げ(基礎年金だけ繰下げなど)も可能になり、より柔軟な選択ができるようになりました。

6. 最後に実際に年金受給の繰り上げ、繰下げしている実際の割合は
・繰下げ受給
(66歳以降の受給開始)は
国民年金が2.2%、厚生年金が1.6% 
・繰上げ受給
(60歳~64歳の受給開始)を選択した人は、
国民年金(基礎年金のみの人)では24.5%、
厚生年金では0.9%となっています。

正解は人それぞれ
年金の繰り上げ・繰下げに「正解」はありません。自分の健康状態、貯蓄、家族の状況、ライフプランなどを総合的に見て、「自分にとっての安心」を優先することが大切です。
迷ったら、年金事務所やFP(ファイナンシャル・プランナー)に相談するのもおすすめです。

参照: 厚生労働省の「2023(令和5)年度  厚生年金保険・国民年金事業の概況」001359541.pdf

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