「ねんきん定期便」に記載されているのは、いわゆる額面で、そこから税金やら、社会保険料やらが天引きされます。老齢の年金は、所得税法の雑所得として扱われ、所得税がかかることになっています。65歳未満の方でその年の支払額が108万円以上の方や、65歳以上の方で158万円以上の方の場合は、原則として所得税がかかります。年金に課税される所得税は、源泉徴収することとなっていますので、日本年金機構では年金を支払う都度、所得税を差し引いています。
一定以上の年金額であれば、所得税、住民税、介護保険料、国民健康保険料/後期高齢者医療保険料が天引きされ、実際の年金の手取り額は、額面の85~90%になります。
出典:日本年金機構ホームページ https://www.nenkin.go.jp/
これらを見据え、50歳代から年金受給までにできる対策としては・・・
1. 現在の年金見込み額の詳細を把握する
まず、日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」をしっかり確認しましょう。この通知書には、年金加入期間、加入実績に応じた老齢基礎年金見込み額、老齢厚生年金見込み額などの詳細が記載されています。
2. 所得税や住民税の負担を軽減する方法を検討する
年金収入にかかる所得税や住民税の軽減が可能な場合があります。以下の方法を検討してください。
(1) 各種控除を活用する
所得税や住民税は、適用される控除額を増やすことで負担を軽減できます。たとえば、以下の控除が該当する可能性があります。
・配偶者控除・扶養控除: 配偶者や扶養親族がいる場合に適用される控除
・医療費控除: 医療費が一定額を超えた場合に申請可能
・社会保険料控除: 支払った介護保険料や健康保険料は控除の対象になります
※これらの控除を活用するためには、確定申告を行う必要があります
(2) 確定申告を行う
源泉徴収だけでは適用されない控除を受けるために、確定申告を行うことが重要です。確定申告を通じて、還付金を受け取れる場合もあります。特に以下の場合は、確定申告を検討してください。
・年金以外の収入が少ない
・医療費が多い
・災害や大きな出費があった
3. 生活設計を見直す
(1) 支出の見直し
・固定費(住居費、光熱費、通信費など)の削減を検討
・趣味や娯楽などの可変費用を再評価。
(2) 副収入、兼業起業の検討
年金収入だけでは生活が難しい場合、健康状態や能力に応じて副収入を得る方法を検討することも一案です。継続雇用、小規模起業、シルバー人材センターやパートタイムの仕事などが選択肢として挙げられます。
4.専門家に相談する
年金は繰り上げ受給や繰り下げ受給、加給年金など複雑で、税金は煩雑で年収103万円の壁の廃止・引き上げなどの審議等専門的な知識が必要な場合もあります。そのため、次のような専門家への相談をおすすめします。
税理士: 所得税や住民税の軽減方法について具体的なアドバイスを受けられます
社会保険労務士: 社会保険料や年金に関する詳しいアドバイスが得られます
自治体の窓口: 保険料軽減や各種支援制度の情報を提供しています
まとめとして
「ねんきん定期便」に記載された額面と実際の手取り額の差が大きいことは多くの方が直面する問題です。2024年7月5日に厚生労働省が発表した「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、年金を受給している高齢者世帯のうち、年金のみでは暮らせない世帯が58.3%となっており、2022年と比較して2.3ポイントも増加しています。また、年金は賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組組みマクロ経済スライドを導入しています。
2023年度の公的年金額について、68歳以上は1.9%増額するも 物価上昇分(2.5%)に追い付かず、実質的には0.6%の目減りとなっていて、67歳以下は2.2%の増額で、同様に0.3%の目減り。
2024年度の公的年金の支給額は、2023年の日本の物価上昇率は3.2%、名目賃金上昇率は3.1%となりました。これを受けて国では、2024年4月から公的年金の支給額を2.7%引き上げましたが、実質0.4%の目減りとなっています。
2025年度の年金額の見通しは1.9%増、基準となる賃金上昇率を2.3%と見込んでいることから、こちらも実質0.4%目減りする年金支給額(見込み)になっています。
昨年12月に厚労省は、マクロ経済スライドによる給付調整の早期終了を答申してはいますが、2025年も実質目減りするカタチになる見通しとなっています。人生100年時代、年金の収入だけに頼ることが難しいことが想定される場合は、個人でできることとして生活設計の見直しや社会人生涯現役での収入の確保を出来るだけ早い段階から準備しておくことが重要になります。