物価高と定年後の現実:生涯現役時代をどう生きるか

近年の物価上昇は著しく、生活費の負担が増す一方で、頼みの綱である年金の増額はわずか1.9%にとどまり、実質的な目減りが続いています。帝国データバンクの発表によれば、今年度の食品値上げはすでに1万797品目に上り、これは前年より4か月早いペースで1万品目を超えたことを意味します。このような状況では、定年を迎えた後も働き続けることがほぼ必須となり、「生涯現役」を前提とした人生設計が求められます。

しかし、定年後の雇用環境は決して楽観視できるものではありません。政府は定年延長や高齢者雇用の推進を掲げていますが、企業側は必ずしもそれに積極的ではなく、実際にはシニア層の雇用環境は厳しいのが現実です。本コラムでは、70歳以降の仕事探しの厳しさと、それに備えるための選択肢について詳しく見ていきたいと思います。

70歳以降の仕事探しの厳しさ
労働力不足が叫ばれる一方で、70歳を超えてホワイトカラーの職を探すのは極めて困難です。特に、大手企業の再雇用制度では60歳以降の待遇が大幅に下がるケースが多く、同じ仕事内容にもかかわらず給与が大幅にカットされることが一般的です。そのため、契約満了を待たずに退社する人も少なくありません。

現在、政府は高齢者の雇用促進を推進していますが、その背景には年金制度の持続可能性に対する懸念があります。「年金だけでは生活できないから、高齢者にも長く働いてもらうしかない」というのが本音でしょう。しかし、企業側の姿勢は異なり、若手や中堅層の確保には積極的でも、シニア層の雇用拡大には消極的な傾向が見られます。結果として、再雇用制度があっても、仕事内容や待遇が希望に沿わないケースが増えているのが実情です。

また、シニア層の多くは「体力的に週3日程度の仕事が理想」と考えているものの、企業は短時間勤務のシニアよりもフルタイムで働ける若年層を優先するため、両者の間には大きなギャップが生じています。さらに、再雇用の仕事は単純作業や非正規雇用が多く、キャリアを活かした仕事に就けるケースは限られています。

定年後に備えるための選択肢
このような厳しい現実を踏まえると、定年後に安定した生活を送るためには、事前の準備が不可欠です。そのための具体的な選択肢として、以下のようなものが考えられます。

1.資格取得によるキャリア継続
専門資格を取得することで、定年後も個人で仕事を続ける道が開けます。特に、以下の資格は独立・副業としても活かしやすく、人気があります。

  • ファイナンシャルプランナー(FP):家計管理や資産運用のアドバイスができる
  • 行政書士:各種書類作成の代行業務
  • 宅地建物取引士(宅建):不動産業界での活躍が可能
  • 社会保険労務士(社労士):労務管理や年金相談の専門家

これらの資格を取得すれば、定年後もフリーランスやコンサルタントとして活動でき、再雇用に依存しない働き方が可能になります。

2. 副業・小規模起業の開始
定年前に副業や小規模なビジネスを始めることで、再雇用後の収入減を補うことができます。最近では、初期投資が少なくても始められるビジネスが増えており、例えば以下のような選択肢があります。

  • 士業(FP、行政書士、マンション管理士等)
  • ネットショップ運営(ECサイト、ハンドメイド販売)
  • オンライン講師(語学・資格試験対策など)

これらのビジネスは、定年後も無理なく続けられる点が魅力です。

まとめとして
物価高や年金の実質目減りが進む中、「生涯現役」が当たり前の時代になりつつあります。しかし、企業の雇用環境とシニア層の希望には大きなギャップがあり、70歳以降の仕事探しは決して容易ではありません。
そのため、定年後も安定した生活を送るためには、早めの準備が不可欠です。再雇用を利用できるうちに、資格取得やITスキルの習得、副業の開始などに挑戦し、将来に備えることが重要になります。

「定年後の再雇用があるうちに、次のステップへの準備を始める」——これが、これからの人生100年時代を生き抜くための最善の策と言えるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次