#50代からの働き方を考える――#パナソニック早期退職募集に見る現実と、小規模起業という選択肢

2025年7月11日、パナソニックホールディングスが進めるグループの構造改革の一環として、傘下の事業会社「パナソニック」が早期退職の募集を行うことが明らかになりました。対象は、勤続5年以上の40歳から59歳の社員、および64歳以下の再雇用者。退職金の上乗せ額は55歳前後が最も多く、最大で数千万円にのぼるとも言われています。

グループ全体としては、従業員の約5%にあたる1万人規模の人員削減を計画しているものの、最終的な募集人数や募集期間はまだ公表されていません。

このニュースから感じるのは、「もはや大企業=安定」という時代ではなくなってきている、という現実です。特に注目すべきは、今回の早期退職に定年後の64歳以下の再雇用者も含まれている点です。国が「70歳までの就業機会確保」を推進している一方で、企業の現場では「中高年をどう整理するか」という、まったく逆の動きが出ています。

つまり、「定年延長=安泰」ではなく、「再雇用」という働き方そのものが、コスト削減の対象となりうるということです。

実際、2024年度に早期・希望退職を募集した上場企業は57社にのぼり、募集人数は1万9人と、2023年度の3,161人(41社)から大きく増加しました。これは3年ぶりに1万人を超える規模であり、特に黒字企業による大型募集が目立ったことも特徴です。こうした早期退職の募集は、もはや特別な出来事ではなく、どの企業でも起こり得る「構造改革の一環」となっています。

このような状況のなかで、特に50代を中心とした世代には、今の働き方を「終点」ではなく「通過点」として捉える柔軟な発想が求められます。役職定年後や再雇用での処遇に不安を抱える方も少なくありません。さらに、近年では若手を惹きつけるために初任給を30万円超に設定する企業が増えている一方で、中高年層の昇給や待遇は抑えられるなど、「世代間のバランスの崩れ」も顕在化しています。

では、50代以降の働き方はどうあるべきか。

結論から言えば、「今の延長線上に未来はない」という前提で、選択肢を広げておくことが重要です。その選択肢の一つとして、私が強く推したいのが「小規模起業」です。

ここで言う小規模起業とは、大きな資金や人材を必要とするものではなく、「ひとりで始められる」「これまでの経験やスキルを活かせる」「場所を選ばない」といった、自分らしいスタイルの起業を意味します。

実際に私が、自分のキャリアの棚卸しをし、「どんな起業が向いているか?」とAIに質問したところ、以下のような5つのアイデアが提案されました。
①高齢者向け資産管理・相続対策の個人FPサービス
概要:
FP資格と貸金業知識を活かし、特に高齢者やその家族に向けて、資産運用・相続・贈与・老後資金設計などをサポート。地域密着型で展開。
収益モデル:
・相談料(時間制)
・顧問契約(月額)
・セミナー・勉強会の開催

②中小企業・個人事業者向け「資金調達&広告戦略」支援
概要:
創業間もない小規模事業者に対し、資金調達(補助金・融資)とプロモーション戦略(広告設計・営業戦略)をセットで支援。
収益モデル:
・補助金申請サポートの成功報酬
・広告設計・制作支援の受託費用
・サブスク型の支援パッケージ(月1万円など)

③ ベトナムなど特定国専門のビジネスサポート業(通訳/商談仲介)
概要:
ベトナム駐在経験を活かし、日越ビジネスのハブ的な役割。視察アテンド、商談通訳、現地調査、日本企業へのレポート作成など。
収益モデル:
・案件単位のコーディネート費用
・現地渡航アテンドサービス(1日○円)
・顧問契約(月額)

④ シニア向け「キャリアの棚卸し&セカンド起業支援」事業
概要:
ご自身の経験を活かし、定年後や60代以上の方向けに「小規模起業」や「副業」のサポートを行う。講座、コンサル、交流会を展開。
収益モデル:
・オンライン講座・ワークショップ
・WEB運営サポート
・個別相談・伴走支援
・イベント開催や共同企画

⑤ 海外向けマーケティング支援(インバウンド/越境EC)
概要:
海外営業17年の経験を活かし、日本企業の「海外進出支援」や「越境EC展開支援」を提供。翻訳ではなく、現地ニーズや文化を踏まえたプロモーション提案が可能。
収益モデル:
・コンサルティング契約(月額固定)
・成果報酬型(売上の一定割合)
・セミナー開催や教材販売

「起業なんて自分には無理だ」と思われるかもしれませんが、実際に起業した方々の多くは、最初から完璧な準備をしていたわけではありません。必要なのは、「小さく始めて、まずは試してみる」という姿勢です。

特におすすめなのは、再雇用で得る安定収入と、小規模起業によるチャレンジを組み合わせた“ハイブリッド型”の働き方です。再雇用の収入で生活の基盤を維持しながら、空いた時間や週末を使ってビジネスを育てていく。このスタイルなら、定年後も「収入源を一つに依存しない働き方」が可能になります。

ここで、ひとつ質問です。
リクルートの調査機関「ジョブズリサーチセンター」が行った「シニア層の就業実態・意識調査2023」によると、「70歳以降も働きたい」と答えた人は、全体の何%だったでしょうか?

A. 15
B. 50
C. 75%以上

正解は、C. 75%以上 です。
さらに、男性では「80歳以降も働きたい」と回答した人が2割以上もいました。

年金や貯蓄だけで悠々自適に暮らせる人はごく一部。多くの人にとって、70歳以降も何らかの形で働き続けることは「選択」ではなく「必然」になりつつあるのです。

だからこそ、「その時が来たら考える」のでは遅すぎます。50代の今こそが準備のタイミング。現役のうちに2~3の起業プランをシミュレーションしてみる。仮に失敗しても立ち直れる余裕のある今だからこそ、「次のステップ」への助走ができるのです。

これからの時代は、「会社に依存する人生」から「自分で設計する人生」へと転換が求められています。パナソニックホールディングスのニュースは、私たちにその現実を突きつけると同時に、「早めの備え」と「柔軟な発想」の重要性を改めて教えてくれているのです。

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