「老々介護」や「遠距離介護」など、私たちの日常生活に関連する新しい言葉が次々に登場しています。流行語大賞を意識している訳ではないでしょうが、その背景には深刻な社会問題が存在していると思います。
「認認介護」とは、認知症を患っている高齢者が、同じく認知症を患っている高齢者を介護している状態を指します。介護する側とされる側の双方に認知症の症状があるため、老々介護と比べて事故のリスクが高く、大変危険です。
厚生労働省の研究班が全国から4つの自治体を抽出し、医師などが65歳以上の高齢者について認知症の診断を行いました。それぞれの自治体の有病率から、将来の全国の認知症患者数を推計したところ、認知症の高齢者は2025年には471万6000人に達し、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年には584万2000人に上ると予測されています。2040年には高齢者の約15%、6.7人に1人が認知症になると見込まれています。
私自身は60歳を過ぎた頃、突然母親の介護が始まりました。母は80歳前半までは元気で、介護のことはほとんど考えていませんでしたが、80代後半で要支援となり、徐々に介護度が上がって一番ひどい時には要介護度5(最終的には要介護度4)まで進行しました。89歳で関西圏から引っ越して同居を始め、母が94歳で亡くなるまで在宅介護を続けました。
母親が40歳の頃に父と死別し、介護費用を補える財産と言えるものはありませんでしたが、12万円ほどの年金で不足する分は同居している私が負担し、月に1~2回は姉弟に時には泊りで手伝ってもらいながら介護を交代していました。要介護度3以上になると年金だけでは不足する感覚がありましたが、経済的な負担はそれほど大きくは感じませんでした。ただ、介護度が進むにつれ、家族が自由に使える時間がほとんどなくなり、私たち自身の老後資金計画をどう確保するかという別の課題が浮上しました。
介護度が高まると訪問介護サービスの利用が増え、家の鍵を預けたり、自ら家の出入りを調整する必要が出てきます。もともと再就労と兼業で起業を考えていましたが、フルタイムの再雇用は物理的に難しく、介護と両立するためには、時間に融通が利く起業が最適だと判断し、起業にシフトしました。少しでも収入があることは精神的にも助けになり、介護がいつ終わるかわからない状況でも、いつでも職場復帰できる環境が非常にありがたかったと感じています。
50代を迎える頃から、親の介護が現実味を帯びてきます。そのため、親や兄弟と早めに相談し、将来に備えることが大切だと思います。私自身、介護の経験から学んだことは、遠距離介護は体力的にも経済的にも厳しく、同居や近居になったとしても、介護施設の選択には一定の条件があり、例えば特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設(老健)は諸条件があり、すぐには入所できなかったり、民間施設は費用が高額になる傾向があったり、更には「老後2000万円問題」にはこれらの費用が含まれていないことも念頭に置くべきだと思います。
重度認知症の義母の旦那さんを介護医療院でケアした際には、特養に入れず、老健に入所しましたが、老健では3か月から半年で転所しなければならず、1年間で3か所の施設を転々としました。最後には車で2時間かかる介護医療院に入所することになりました。
「認認介護」は、そのような状況がダブルで発生する可能性があり、夫婦共に認知症を抱えながら介護を行うという非常に厳しい現実を意味します。
認知症は早期発見が重要であり、軽度のうちは認知症新薬「レカネマブ」によって進行を遅らせることも可能です。家族で相談し、何かあった際には認知症検査を受けることについての事前承諾を取っておくことも、ぜひ検討していただければと思います。
マイクロ起業コンシェルジュでは、介護などが発生した際に、収入減が年金と再雇用の二本柱だと年金だけになる可能性がありますが、年金と再雇用に加えて極小=マイクロ起業を行うことで、三本柱を持ち柔軟に対応できる3ポートフォリオ体制を整えることができると考えています。