#初任給30万円時代にも将来に不安を抱える若者             #非正規雇用として長らく働かざるを得なかった就職氷河期世代

「今の若者の初任給は30万円」──そんなニュースを目にして、複雑な思いを抱いた中高年の方も多いのではないでしょうか。自分たちが新卒だった頃は、初任給は18万円前後が一般的。そこから年功序列で徐々に昇給し、長く勤めれば安定が手に入る時代でした。

しかし今の若者たちは、物価高騰や人手不足などの背景から、最初から比較的高めの給与で社会人生活をスタートさせるケースが増えています。一見「恵まれている」と思えるかもしれませんが、若者たちにはまた別の苦悩が存在します。社会保障の不安、終身雇用の崩壊、将来への展望のなさなど、多くの問題を抱えた上での高給スタートです。

一方、中高年層の一部からは「最近の若者は甘やかされている」といった批判的な声も聞こえてきます。しかし若者世代からは、「上の世代が作ってきた社会のツケを押しつけられている」という不満も根強く、SNSでは「50代・60代はバブルの恩恵を受けた世代」とひと括りにされて批判されることも少なくありません。

このように、世代間の分断が浮き彫りになる中で、忘れられがちな存在があります。それが「就職氷河期世代」です。

氷河期世代は、1993年から2005年ごろに社会に出た世代。バブル崩壊後の不況の中、極端な採用抑制に直面し、希望する企業に就職できなかった人も多く、非正規雇用として長く働かざるを得なかった人が多数います。その影響はキャリアの形成、収入の安定、老後資金の準備など、人生のあらゆる局面にまで及んでいます。

政府もその深刻さを認識し、氷河期世代に向けた就労支援や職業訓練、正規雇用促進といった施策を展開しています。目的は、生活の安定だけでなく、社会保障制度の持続や経済活性化という大きな目標にもつながります。しかしながら、年齢的には中高年に差し掛かっている氷河期世代は、しばしばバブル世代や団塊ジュニアと混同され、「特権世代」として誤解されがちです。

氷河期世代はこの立場をどう乗り越え、どのように社会と関わっていけば良いのでしょうか。

厳しい時代を生き抜いた経験は、裏を返せば「柔軟性」や「工夫する力」として今後の資産となり得ます。政府の支援も単なる福祉的援助にとどまらず、その経験を活かして、自らのスキルを小さな仕事に変えていく「スモールビジネス」や「自営的な働き方」に注目すべきです。

副業、地域活動、資格取得など、自立的に社会とのつながりを保ち続ける手段は数多くあります。小さくても「自分の経済」を築き、生涯現役で細く長く働くスタイルは、老後の安心にもつながります。

また、50代という人生の節目では、「将来への備えの見直し」が重要になります。年金や健康の問題、親の介護、そして自身の定年後の生活など、向き合うべき課題は少なくありません。
しかし、就職氷河期やバブル崩壊、「失われた30年」といった厳しい時代を生き抜いてきた氷河期世代の方々は、豊富な経験があります。その実体験をもとに、これからの人生を主体的に立て直し、「自分の手で道をつくる」という姿勢を持つことこそが、次の世代に希望をつなぐ力になるのだと思います。

社会は常に変化します。かつての常識が通用しない場面は、これからますます増えていきます。だからこそ、氷河期世代こそが「経験の押し売り」ではなく、「学び直し」と「柔軟な適応力」を武器に、新しい時代とどう共に生きるかを考えていくことが求められます。

若者が未来に希望を持てる社会をつくるためには、中高年世代が「過去」に固執せず、価値観や働き方の変化を受け入れるという姿勢を持つことが重要になります。
氷河期世代は、バブル崩壊後の不確実な時代を生き抜き、上にも下にも目線を持てる“ハイブリッドな世代”です。だからこそ、若者に寄り添いながら、同時に社会の構造にも目を向け、変革を後押しする“時代の架け橋”としての役割を担える世代と言えます。

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