# 「老後破産」とは、年金などの収入だけでは生活費を賄いきれず、貯蓄が尽きた状態を指します。高齢化が進む中、日本では年金だけで暮らせず、経済的に厳しい状況に陥る高齢者が増加傾向にあります。

2020年の日本弁護士連合会の調査によれば、破産申立者のうち60代は16.37%、70代以上は9.35%を占め、高齢者の破産件数は2002年比で約2.4倍に増加しています。また、高齢者世帯の生活保護受給者も2000年以降急増しており、経済的な不安定さが浮き彫りとなっています。

老後破産に至る理由としては、主に以下が挙げられます。

1.年金収入の不足:年金だけでは日常生活の支出をまかないきれないため、日々の生活費を貯蓄で補う必要があるケースが多く見られます。内閣府の「令和元年 高齢者の経済生活に関する調査」では、60歳以上の48.1%が貯蓄を取り崩して生活していると回答しており、年齢が上がると医療費や介護費が増加するため、取り崩し額も増える傾向にあります。

2.退職金の減少:企業の退職金の支給額が減少し続けているため、退職後の資金が不足する傾向にあります。これにより、年金以外の収入や資産運用が必要となりますが、労働や投資が難しい高齢者には厳しい課題です。

3.住宅費の負担:住宅ローンや家賃の負担が重く、老後も完済できない場合が増えています。住宅費が高いままだと、年金や貯蓄を圧迫し、老後破産に繋がるリスクが高まります。

4.家族の扶養負担:親の介護費や子どもへの経済支援など、家族のために収入や貯蓄を割くケースもあります。これにより、老後資金が不足しがちです。

5.健康上の問題:年齢が上がるとともに病気や介護が必要になる確率が増え、それに伴う医療費や介護費が負担となります。

老後破産を防ぐための対策
1.年金額の把握:リタイア前に自身の年金受給額を把握し、老後の収入を明確にしておくことが重要です。50歳以降に届く「ねんきん定期便」を確認したり、年金シミュレーターを利用するなどして、老後の収入見通しを立てることができます。

2.長く働く:可能な限り働き続け(可能あれば生涯現役で)、収入を確保することが有効です。共働きで家計の負担を分担することも、老後の安定した生活に繋がります。リタイア時期を遅らせることで、年金受給開始を遅らせて年金額を増やす選択肢もあります。

3.住宅ローンの完済:リタイアまでに住宅ローンを完済することを目指し、老後の住宅費負担を減らすことが重要です。ただし、無理に一括返済して生活資金が減らないよう、余裕を持って計画的に返済を進めることが勧められます。わたしの場合は、まだ住宅ローンが残っていますが、できるだけ繰り上げ返済をして月々の支出を減らすことが大切だと思います。

4.生活費の見直し:リタイア時期が近づいたら、生活費を見直し、できる限り支出を抑える工夫が必要です。家計をコンパクトにすることで、必要な老後資金を抑え、経済的負担の軽減に繋がります。格安携帯への切り替え、50代の現業あるうちに住宅ローンの借り換えなど、毎月の支出になりますので要検討です。

5.資産形成の早期開始:老後資金を少しでも確保するため、早い段階から資産形成を始めることが肝心です。例えば、個人年金保険やiDeCo、NISAなどを活用し、長期的に資産を運用しながら将来の老後資金を確保します。特にNISAやiDeCoは税制優遇もあり、少額から積み立てを行うことができます。

まとめ
高齢化社会の進展とともに、年金だけで生活するのが難しい老後の経済的不安が多くの人にとって現実となっています。老後破産に陥らないためには、リタイア前から生涯現役での就労、年金額の把握、生活費の見直し、資産形成の計画などを始めることが大切です。長期にわたり働くことや早めの資産形成を心掛け、一日も早い対策を行うことが重要であると言えます。

調査によると、「日常生活の支出の中で、収入より支出が多くなり、これまでの預貯金を取り崩してまかなうことがありますか。」との問いに対し、48.1%の方が「取り崩しがある」と回答しています。この割合は65~69歳をピークに、年齢が上がるにつれ減少傾向にありますが、今コラムのスペースでは詳細をご紹介しきれませんでしたので、次回コラムと2回に分けて共有させていただければと思います。

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