開業資金の中央値が、1995年の1,000万円から2023年には550万円にまで減少しています。 「2023年度新規開業実態調査」(日本政策金融公庫)によると、近年、日本の起業環境には大きな変化が見られ、特に「250万円未満」の開業が20.2%、「250万~500万円未満」が23.6%と、少額での開業が増えていることがわかります。

これは、インターネットの普及やバーチャルオフィスの活用などが進み、初期投資を抑えやすくなったためと考えられます。従来と比べ、少額での起業が実現しやすくなった現状は、特に50代の起業を後押しする要素となっているでしょう。実際、50代の開業者の割合は、1995年の11.5%から2023年には約2倍の20.2%に増加しています。

主な調査結果

1995年2023年
開業資金(中央値)1,000万円 550万円
開業50代の割合11.5%20.2%
自己資金453万円280万円
女性起業家の割合13.3%24.8%

開業時に苦労したことは、「資金繰り、資金調達」が59.6%と最も多く、次いで「顧客・販路の開拓」が48.5%、「財務・税務・法務 に関する知識の不足」が37.5%となっています。

出典:日本政策金融公庫 総合研究所「2023年度新規開業実態調査」
   kaigyo_231130_1.pdf

こうした背景からも、50代であっても大きな投資を避け比較的無理なく小規模に起業を始めることが可能な時代となりつつあります。少額での開業には、法人でなく個人事業主としてスタートする方法も効果的です。個人事業主は法人に比べ信用力が劣る面があるものの、事業が軌道に乗るまでの段階では、法人登記などの初期コストを削減できる利点があります。
たとえば、2004年に自由が丘で雑貨ショップを開業した際には、テナント契約料や什器備品の購入、仕入れなどの費用で800万円程度の初期投資がかかりましたが、2015年に個人事業主としてテナント事業を開始した際には、50万円程度でスタートできました。さらに、近年はホームページの活用によって、実店舗を持たずにリモートで全国の顧客をターゲットにできるため、出店に伴うコストが抑えられます。これらは起業への大きなハードルを下げる要因となり、地域を超えた事業展開の可能性も広がっていると言えると思います。

また、現代のビジネス環境では、コンサルタント業、ファイナンシャル・プランナーや士業など専門知識を活かした起業が増加しています。こうした専門職の場合、オフィスを構えず自宅を拠点にし、主にホームページでの告知と顧客の獲得を行うことで、開業資金を抑えながら顧客基盤を拡大していくことが可能です。特にリモートワークが一般化した現在、全国からの集客が容易になったため、従来では難しかった地域外の顧客にもリーチできる点も魅力です。

加えて、時代に流れに合わせ転換していくことも重要になります。我々は自由が丘で雑貨ショップを展開していましたが、今では幾多ある商品群の中から、天然石の加工販売に絞り、受注販売を基本とすることで、在庫を抱えるリスクを軽減しつつ、お客様からの注文が入った時点で制作を開始することができます。 “雑”貨店から時代の流れに合わせ“単”貨店にシフトしたことで、過剰な仕入れコストや在庫管理の負担を最小限に抑えつつ、一定の収益を得ることが可能になります。 

失敗事例としては、SDG’s(持続可能な開発目標)の潮流に合わせて、環境や健康に配慮した自然栽培茶事業をコロナ禍に展開しましたが、仕入れや商品が多数あると管理が難しく、ECモール運営会社への手数料や、配送料などのコストが嵩む事業領域は、小規模起業には向かないことも経験させていただきました。この失敗から、間接費用がほとんど発生しないテナント事業とコンサルタント業にフォーカスし、毎月のコストを抑え、利益を確保しやすい仕組みが整っています。

最後に、調査結果では、開業に「満足」している開業者が7割以上、開業の総合的な満足度をみると、「かなり満足」(26.3%)と「やや満足」(47.0%)を合わせた「満足」が73.3%に上っています。 「満足」の割合を項目別にみると、仕事のやりがい(自分の能力の発揮)で83.4%と高く、ワークライフバランスは51.5%、事業から の収入は25.5%となっています。
事業収入が25.5%との結果がありますが、50代からの起業は大きなリスクは避けなければなりませんので、3つのポートフォリオ(継続再雇用、小規模起業、年金受給)でのリスク分散がとても重要であり、 その中でもライフワークになる起業のシュミレーションをしっかりとするには、人生100年時代の折り返しで現業のある50代は最適のタイミングなのではないでしょうか。

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