ベトナム赴任時代に祈祷師のお世話になったことがあります。 1992年、ベトナムに駐在していた頃、私は首筋のリンパ腺が腫れ、頬から顎にかけて二倍に膨れ上がってしまい、外資系の病院にかかりました。一人駐在で、代表のサインがなければ業務が滞るため、どうしても会社に行く必要がありました。抗生物質を処方されましたが、効果はあまりなく私は這うようにして会社に通っていました。そんな状況を見かねたドライバーのLoiが「俺に任せろ」と言い、半日ほどスケジュールを空けるように指示されました。
Loiに連れられて車で40分ほど走った後、大きな通りから狭い路地へと入り、止まった場所には一人の老婆が待っていました。彼女はホーチミンでは知られた祈祷師とのことで、これから行われる施術の準備を進めていました。老婆は仏壇に火を灯し、お神酒を供え、私に座るよう促しました。儀式が始まり、彼女は呪文のような言葉を唱えた後、ろうそくの火を口で覆い(殺菌効果?)、次にお神酒を口に含んで私の顔に数回吹きかけました。私のスラックスにはろうそくの蝋やお神酒の雫が滴り落ちましたが、生まれて初めての祈祷師の儀式に、ただただなされるがままでした。
祈祷が終わると、老婆は白い塗り薬と薬草を渡し、家に帰ったら熱いお湯をたらいに注ぎ薬草を放り込み、顔に白い塗り薬を塗った状態で、タライごとシーツをかぶり汗を出し切るように指示されました。家に帰り、妻が手伝ってくれましたが、彼女は「逆デーモン閣下みたいだ」と笑いをこらえながら私を見ていました。不思議な体験でしたが、二日後には腫れが引き始めました。祈祷が効いたのか、それとも治るタイミングだったのかは分かりませんが、この出来事は私にとって非常に貴重な経験となりました。
日本では祈祷師は表立ってはあまり見かけませんが、占い師はテレビ番組もあるようにポピュラーになっています。占い師としての起業は、日本での新しいマイクロ起業の可能性として非常に魅力的に感じています。初期投資が少なく、特別な資格も必要ないため、比較的気軽に始めることができます。さらに、こうした職業は、現代の不安定な時代においても安定した需要があり、人々の心の支えとなるサービスを提供できます。
特にオンラインの活用により、これらの職業は地域や国を越えて幅広い層にアプローチできるようになり、ビジネスの拡大も期待できます。また、自身の経験や知識を活かしてパーソナライズされたサービスを提供することで、他の競合との差別化を図ることも可能です。司法書士や行政書士といった所謂“士業”が人気の中、祈祷師や占い師といった“師”業も、同様に小規模=マイクロ起業として注目されるべき職業だと思っています。心のケアが求められる今の時代において、これらの職業は今後も需要が続くのではないでしょうか。