公的年金1.9%増へ 25年度、実質0.4%減  【 12月20日 共同通信】  厚生労働省は、#2025年度の公的年金支給額を前年度比1.9%増額する方向で調整に入った。

基準となる賃金上昇率を2.3%と見込む一方、支給額を抑制する仕組みがあるため、実質0.4%分減る。年末の予算編成で詳細を詰める。25年度の年金額(1956年4月2日以後に生まれた人)は、自営業者らの加入する国民年金(基礎年金)が満額で月額約1300円増の約6万9300円。会社員らが加入する厚生年金は、平均的な給与で40年間働いた夫と専業主婦のモデル世帯で、基礎年金部分も含め月額約4400円増の約23万4900円となる見通し。  

抑制の仕組みは「マクロ経済スライド」と呼ばれ、年金財政が安定するまで続ける。 公的年金は、賃金や物価の変動を踏まえて毎年度、支給額を改定する。

出典:2024年12月20日 共同通信https://news.yahoo.co.jp/articles/d837085d31df2c620c3f95a6725c034c94dd269d

マクロ経済スライドとは?
マクロ経済スライドは、2004年の年金制度改正で導入された仕組みで、年金給付額を緩やかに調整し、年金財政の安定を図ることを目的としています。賃金や物価の変動によって年金額を毎年改定する基本ルールに対し、この仕組みでは「スライド調整率」という補正を加えることで、給付額の増加を抑える仕組みです。スライド調整率は、現役の被保険者数の減少や平均余命の伸びを反映して算出されます。

仕組みの背景と目的
通常、年金給付額は物価や賃金が上昇すると比例して増加します。しかし、少子高齢化により年金を支える現役世代が減少し、年金財政が圧迫される状況では、給付額の増加をそのまま反映させると、現役世代の負担が増え続けてしまいます。そこで、マクロ経済スライドによって給付額の増加を抑え、現役世代の負担を軽減しつつ、受給者にも一定の負担を共有してもらう仕組みが導入されました。

具体的な調整の仕組み 
年金給付額の改定率は、物価や賃金の上昇率からスライド調整率を差し引いて算出されます。例えば、賃金の伸び率が2.0%でスライド調整率が0.4%の場合、年金改定率は「2.0%−0.4%=1.6%」となり、1.6%分だけ給付額が増加します。一方、賃金や物価の伸びが小さい場合や下落する場合には、以下のような対応が取られます。

  1. 賃金や物価がわずかに上昇した場合
    スライド調整率が適用され、改定率が正の値であれば、その範囲内で給付の増加が抑えられます。
  2. 賃金や物価の伸びがスライド調整率より小さい場合
    スライド調整率を差し引くと改定率がマイナスになる場合、給付額が名目で減額されないよう調整されます(名目下限措置)。給付額は据え置かれます。
  3. 賃金や物価の上昇率がマイナスの場合
    賃金や物価が下落した分だけ給付額が引き下げられますが、それ以上の削減は行われません。

また、2018年度からは、スライド調整の未実施分を翌年度以降に持ち越して調整する「キャリーオーバー制度」が導入されました。この制度により、賃金や物価が大きく上昇した年にまとめて調整が行われる仕組みとなっています。

メリットとデメリット
この仕組みのメリットは、現役世代の負担増加を抑え、年金財政の安定を図れる点です。少子高齢化が進む中、持続可能な年金制度を維持するためには必要な施策といえます。しかし、デメリットとしては、受給者が受け取る年金額が物価や賃金の上昇率に見合わないため、実質的に目減りしてしまう点があります。
現役世代の負担軽減を目的とした制度ですが、将来的に現役世代も年金受給者となるため、自分たちが受け取る年金額にも影響がある点を理解しておく必要があります。

まとめとして
マクロ経済スライドは、少子高齢化に伴う年金財政の危機に対応するための重要な仕組みです。現役世代と受給者が互いに負担を分かち合うことで、持続可能な年金制度を目指しています。ただし、年金給付額の目減りや将来的な不安など、受給者側の視点から見ると課題もあります。この仕組みを踏まえた上で、自身の老後の生活設計を考えることが重要です。

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