金利の上昇や為替変動といった外部要因が企業の経営に影響を与え、業績の好調な企業でも構造改革の一環として人員削減を進めるケースが目立ちます。このような背景の中で、多くの企業が人件費削減のために早期退職の実施を急いでいる状況が浮かび上がっています。
早期退職を募る企業の傾向
上場企業の早期退職の募集企業は、東証プライムに上場する大手企業が約7割を占め、その中には黒字を維持している企業も約6割存在しています。これは、不採算部門の整理や構造改革を進めるため、業績好調の企業でも戦略的な人員削減を実施している状況を表しています。また、リコーやソニーグループのような大手企業が大型の希望退職を募り、さらに複数回の募集を行う企業が増えているのも特徴です。2024年は9月末までに東北新社が3度目の募集を実施しており、これも構造改革を急ぐ企業の現状を示しています。
対象年齢の引き下げと人員削減の加速
早期退職の対象年齢も、かつては50代以上が中心でしたが、近年はその年齢が引き下げられています。2024年には30歳以上を対象とした募集も見られ、これは若年層も含めた幅広い年齢層が削減対象になっていることを意味します。こうした傾向は、企業が将来の経営リスクを見据え、若い世代のキャリア形成や給与負担を早期に見直す動きとも言えます。
さらに、日産自動車は11月に全従業員の7%にあたる9,000人の人員削減計画を発表しました。販売不振が続く北米や中国市場での業績悪化を受け、世界的にリストラを実施するとしています。日産の9月中間連結決算でも最終利益が前年と比べて9割以上減少しており、生産能力も2割削減すると発表されました。このような厳しい経営状況が背景にあり、企業は積極的に人員整理や早期退職の募集に踏み切っています。
早期退職を選択した理由とメリット
私自身は56歳で早期退職に応募しました。その理由は、早期退職で得られる割増退職金が定年まで勤めた場合と比較しても、58.5歳までの総収入をカバーできる点にあったこと、定年後に継続雇用を選んでも65歳までの雇用が限界で、そのあと2度目の定年後の再々就職の難易度がさらに上がることが予想されること、シニア世代が人件費の抑制対象として扱われる傾向もある中で、早期に新たな道を見つけることの重要性を感じました。
早期退職に踏み切る決断は、長期的なキャリアプランの見直しも重要です。退職金は年々減少傾向にありますが、早期退職者には割増退職金が支給されることが一般的であり、また会社都合での退職扱いになるケースがほとんどであるため(会社によって違う場合がありますので要確認)、会社都合であれば自己都合よりも失業保険の受給内容が優遇されます。これらを総合的に考慮すると、一定の資金を確保しつつ新たなキャリアに挑戦するための良い機会になるのではと思います。
兼業・副業での社会人生涯現役の準備と早期退職後の選択肢
今後、社会人として生涯現役を目指す上で、早期退職も見据えたキャリアプランの準備がますます重要になると思います。私の場合、前職では兼業や副業が許可されていませんでしたので退職してからの起業準備でしたが、現在では多くの企業が柔軟な働き方を許容する傾向にあります。定年退職後の選択肢を広げるためにも、50代在職中から週末起業や副業を小規模に始め、退職後のキャリアに備えることが賢明だと思います。小規模でも副収入を得る基盤があれば、早期退職の募集があった際に、早期退職と定年退職の両方の選択を余裕を持って判断できるのではと思います。どちらか一方に決めるのではなく、柔軟に対応できるようにすることで、経済状況の変化や自分の生活状況に合わせた最適な選択が可能になるのではと思います。
まとめ
日本の上場企業における早期退職募集は増加の一途をたどり、募集年齢も引き下げられるなど、企業のリストラ策は多様化しています。景気や為替の不安定さが続く中、今後も人員整理の動きは続くと予想され、定年までのキャリアが不確実なものになりつつあります。そのような中で、早期退職は少しまとまった資金を確保する手段の一つであり、また新たなキャリアへの第一歩にもなり得ます。現役世代にとっては、週末起業や副業を通じて退職後の選択肢を準備し、長期的なキャリアプランを構築することが、変化の激しい現代におけるキャリア戦略として非常に重要になると思います。
参照:株式会社東京商工リサーチ2024/10/07
上場企業の「早期退職」募集 46社 人数は前年同期の約4倍 複数回募集が増加、対象年齢は30歳以上など引き下げ傾向 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ