「仏壇を置くほどではない。でも、何もないのは少し気になる」
都市部で暮らす50代・60代の方と話していると、こうした“言葉にしづらい感情”に何度も出会います。
今回の恩送りファンド実験では、そんな声を出発点にした「メモリアルイラスト事業」の再設計に取り組んでいます。
昨日はオンラインで定例ミーティングを開催し、事業スキームの再検証とコンセプト整理を中心に議論を行いました。
■解決しようとしている“3つの違和感”
改めて、ターゲットが抱える悩みを整理しました。
・仏壇は重い・場所を取る・宗教色が強い
・何もないのは、少し後ろめたい・寂しい
・都市生活に合う供養の形が見つからない
■今回のテーマ:「刺さるコンセプト」への再設計
これまでの議論で見えてきたのは、
従来型の“遺影イラスト中心の供養サービス”では差別化が難しいという現実です。
特にビジュアル表現に寄せすぎると、
イラストサービスや記念日サービスとの境界が曖昧になり、
「それをあえて供養として選ぶ理由は何か?」という問いに明確に答えられなくなります。
そこで今回見直したのは、“何をつくるか”ではなく“どんな感情に応えるのか”という軸です。
整理した新コンセプトは以下の通りです。
「罪悪感を軽くする供養」×「生活に馴染むあり方」
具体的な形や提供方法についてはまだ検証段階ですが、
共通しているのは、単なるモノや表現ではなく
「日常の中で自然に気持ちを整えられる仕組み」として設計している点です。
これは、商品というよりも
“感情の受け皿をどう日常に置くか”という価値提案に近いものです。
つまり本質は、「供養そのもの」ではなく
“罪悪感や未消化の想いをどう扱うか”にあります。
この視点に立つことで、単なるメモリアルイラストはなく「意味のある空間」としての方向性が明確になりました。
■現在の進捗:商品設計フェーズへ
コンセプトの再整理を受けて、現在は商品設計の具体化に進んでいます。
・サイズ感(都市住宅に収まるか)
・素材(安っぽくならず、主張しすぎない)
・価格帯(心理的ハードルを越えられるか)
こうした要素を一つひとつ検証しながら、「買う理由」を積み上げている段階です。
■これまでの実験で見えてきた3つの課題
実際に伴走しながら強く感じているのは、次の3点です。
① 新規事業の組み立て方(市場とコンセプトのズレ)
まず最初につまずくのは、
「何をやるか」から考えてしまうことです。
本来は、
市場の流れ(F/S)や既存サービスの立ち位置を見た上で、
“どこに余白があるのか”を見つける必要があります。
今回のケースでも、
似たような領域に見えるサービスは存在しますが、
「なぜそれを選ぶのか」という理由が弱いと埋もれてしまいます。
つまり重要なのは、
競合と同じことをしないことではなく、
“選ばれる理由が成立しているか”を設計できているかです。
② コンセプトの言語化(伝わる形にできているか)
次に出てくるのが、
「いいことを考えているのに伝わらない」という壁です。
頭の中では整理されていても、
言葉にした瞬間にぼやけてしまうケースは非常に多いです。
特に今回のような感情に関わるテーマでは、
機能や特徴ではなく、
“どんな気持ちにどう効くのか”を一言で表現できるかが重要になります。
ここが曖昧なままだと、
商品説明をいくら増やしても、なかなか刺さりません。
③ 価格と商品設計
最後に直面するのが、価格と商品のバランスです。
安すぎると価値が軽く見え、
高すぎると“特別な人のもの”になってしまう。
特にこの領域では、
単なる原価や相場ではなく、
「この金額なら気持ちよく選べるか」という納得感が判断基準になります。
そのため、価格は単体で決めるものではなく、
商品内容や見せ方とセットで設計する必要があります。
■次回までのアクション:3つに絞る
また、今回のミーティングでは、「やることを増やさない」ことも重視しました。
次回までのアクションはあえて3つに限定しています。
例えば
・商品仕様の仮決定(サイズ・素材・価格帯)
・コンセプトを一言で伝えるコピーの言語化
・ターゲット像の具体化(誰のどの瞬間に刺さるか)
これら3点に集中することで、「考えているだけ」の状態から一歩進めます。
■起業は“自分で決める”訓練でもある
企業では、与えられた役割の中で最適解を出すことが求められます。
一方、起業は「何をやるか」そのものを自分で決める世界です。
今回の支援起業先も、本業と並行しながら試行錯誤を続けています。
最初は戸惑いもありますが、目線を未来に合わせ続けることで、少しずつ意思決定の精度が上がってきます。
■実験だからこそ、修正と見極めを繰り返す
このプロジェクトは「成功前提の支援」ではなく、あくまで実験です。
進める中で方向修正が入ることもあれば、
場合によっては次の支援フェーズに進めないケースも出てきます。
ただ、それも含めてすべてが検証材料です。
■このコラムの位置づけ
このコラムは、
「人生後半の経験や想いが、次の誰かの役に立つ」
そんな小さな事業を応援するTAIGA恩送りファンドの実験記録として書いています。
実際に一社を選び、
事業づくり・発信・集客まで伴走する中で、
・どこでつまずくのか
・何が効くのか
を、現場ベースで言語化しています。
派手な成功事例ではありません。
しかし、だからこそ再現性があります。
「50代からの小規模起業」において本当に必要なのは、
一発逆転ではなく、こうした地に足のついた試行錯誤なのだと感じています。
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