恩送りファンド実験|コラム#5 「ちょうどいい供養」は成立するのか?事業スキーム再検証の現場から

「仏壇を置くほどではない。でも、何もないのは少し気になる」

都市部で暮らす50代・60代の方と話していると、こうした“言葉にしづらい感情”に何度も出会います。

今回の恩送りファンド実験では、そんな声を出発点にした「メモリアルイラスト事業」の再設計に取り組んでいます。
昨日はオンラインで定例ミーティングを開催し、事業スキームの再検証とコンセプト整理を中心に議論を行いました。

解決しようとしている“3つの違和感”

改めて、ターゲットが抱える悩みを整理しました。
・仏壇は重い・場所を取る・宗教色が強い
・何もないのは、少し後ろめたい・寂しい
・都市生活に合う供養の形が見つからない

今回のテーマ:「刺さるコンセプト」への再設計

これまでの議論で見えてきたのは、
従来型の“遺影イラスト中心の供養サービス”では差別化が難しいという現実です。

特にビジュアル表現に寄せすぎると、
イラストサービスや記念日サービスとの境界が曖昧になり、
「それをあえて供養として選ぶ理由は何か?」という問いに明確に答えられなくなります。

そこで今回見直したのは、“何をつくるか”ではなく“どんな感情に応えるのか”という軸です。

整理した新コンセプトは以下の通りです。

「罪悪感を軽くする供養」×「生活に馴染むあり方」

具体的な形や提供方法についてはまだ検証段階ですが、
共通しているのは、単なるモノや表現ではなく
「日常の中で自然に気持ちを整えられる仕組み」として設計している点です。

これは、商品というよりも
感情の受け皿をどう日常に置くか”という価値提案に近いものです。

つまり本質は、「供養そのもの」ではなく
“罪悪感や未消化の想いをどう扱うか”にあります。

この視点に立つことで、単なるメモリアルイラストはなく「意味のある空間」としての方向性が明確になりました。

現在の進捗:商品設計フェーズへ

コンセプトの再整理を受けて、現在は商品設計の具体化に進んでいます。

・サイズ感(都市住宅に収まるか)
・素材(安っぽくならず、主張しすぎない)
・価格帯(心理的ハードルを越えられるか)

こうした要素を一つひとつ検証しながら、「買う理由」を積み上げている段階です。

これまでの実験で見えてきた3つの課題

実際に伴走しながら強く感じているのは、次の3点です。

① 新規事業の組み立て方(市場とコンセプトのズレ)

まず最初につまずくのは、
「何をやるか」から考えてしまうことです。

本来は、
市場の流れ(F/S)や既存サービスの立ち位置を見た上で、
“どこに余白があるのか”を見つける必要があります。

今回のケースでも、
似たような領域に見えるサービスは存在しますが、
「なぜそれを選ぶのか」という理由が弱いと埋もれてしまいます。

つまり重要なのは、
競合と同じことをしないことではなく、
“選ばれる理由が成立しているか”を設計できているか
です。

② コンセプトの言語化(伝わる形にできているか)

次に出てくるのが、
「いいことを考えているのに伝わらない」という壁です。

頭の中では整理されていても、
言葉にした瞬間にぼやけてしまうケースは非常に多いです。

特に今回のような感情に関わるテーマでは、
機能や特徴ではなく、
“どんな気持ちにどう効くのか”を一言で表現できるかが重要になります。

ここが曖昧なままだと、
商品説明をいくら増やしても、なかなか刺さりません。

③ 価格と商品設計

最後に直面するのが、価格と商品のバランスです。

安すぎると価値が軽く見え、
高すぎると“特別な人のもの”になってしまう。

特にこの領域では、
単なる原価や相場ではなく、
「この金額なら気持ちよく選べるか」という納得感が判断基準になります。

そのため、価格は単体で決めるものではなく、
商品内容や見せ方とセットで設計する必要があります。

次回までのアクション:3つに絞る

また、今回のミーティングでは、「やることを増やさない」ことも重視しました。
次回までのアクションはあえて3つに限定しています。

例えば
・商品仕様の仮決定(サイズ・素材・価格帯)
・コンセプトを一言で伝えるコピーの言語化
・ターゲット像の具体化(誰のどの瞬間に刺さるか)

これら3点に集中することで、「考えているだけ」の状態から一歩進めます。

起業は“自分で決める”訓練でもある

企業では、与えられた役割の中で最適解を出すことが求められます。
一方、起業は「何をやるか」そのものを自分で決める世界です。

今回の支援起業先も、本業と並行しながら試行錯誤を続けています。
最初は戸惑いもありますが、目線を未来に合わせ続けることで、少しずつ意思決定の精度が上がってきます。

実験だからこそ、修正と見極めを繰り返す

このプロジェクトは「成功前提の支援」ではなく、あくまで実験です。

進める中で方向修正が入ることもあれば、
場合によっては次の支援フェーズに進めないケースも出てきます。

ただ、それも含めてすべてが検証材料です。

このコラムの位置づけ

このコラムは、
「人生後半の経験や想いが、次の誰かの役に立つ」
そんな小さな事業を応援するTAIGA恩送りファンドの実験記録として書いています。

実際に一社を選び、
事業づくり・発信・集客まで伴走する中で、

・どこでつまずくのか
・何が効くのか

を、現場ベースで言語化しています。

派手な成功事例ではありません。
しかし、だからこそ再現性があります。

「50代からの小規模起業」において本当に必要なのは、
一発逆転ではなく、こうした地に足のついた試行錯誤なのだと感じています。

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