「定年が延びているから、65歳を過ぎても何とか働けるだろう」
「年金もあるし、足りない分だけアルバイトをすればいい」
50代、60代の方の中には、そう考えている方も少なくないのではないでしょうか。
確かに、日本では定年延長や継続雇用が進み、中高年が働き続ける環境は以前より整ってきました。
しかし、現在67歳の私自身、早期退職後の就労を経験して感じているのは、
「65歳以上の就業率が高いこと」と「65歳を過ぎても自分が希望する仕事を選べること」は、まったく別の話だ
ということです。
新卒は「売り手市場」。では65歳を過ぎたら?
まず、現在の若者の就職環境を見てみましょう。
2026年卒の大学・大学院生では、民間企業への就職希望者約46.2万人に対して、企業の求人総数は約74.8万人。求人倍率は1.62倍です。前年の2025年卒も1.66倍でした。
つまり、若者の就職市場では、就職希望者より企業の求人の方が約29万人も多い状況です。
人手不足を背景に企業の新卒採用競争は激しくなり、初任給30万円台を提示する企業も珍しくなくなりました。
では、私たちセカンドライフ世代はどうでしょうか。
65歳以上は約3,620万人。すでに930万人が働いている
総務省の最新の人口推計では、2026年3月時点の65歳以上人口は約3,620万人。
日本の人口のおよそ10人に3人が65歳以上です。
そして、65歳以上で実際に働いている人はすでに930万人に達し、過去最多となっています。
特に65~69歳では、すでに2人に1人以上が働く時代になりました。
「65歳になったら仕事を辞めて年金生活へ」という時代から、「65歳を過ぎても働く」という時代へ、社会は確実に変わってきています。
これだけを見ると、
「高齢者でも働ける社会になったのだから、それほど心配しなくてもいいのではないか」
と思うかもしれません。
しかし、ここで見ておきたい数字があります。
65歳以上の「役員を除く雇用者」では、76.9%が非正規雇用です。
もちろん、パート、アルバイト、契約社員などの働き方そのものが悪いわけではありません。
勤務時間を選びやすく、自分の生活に合わせて働けるというメリットもあります。
問題は、
「それが自分の望んだ働き方なのか」
ということです。
「65歳まで働ける」と「65歳から仕事を探す」は違う
現在、企業には65歳までの雇用確保措置が義務付けられており、ほぼすべての企業が対応しています。
一方、70歳までの就業機会確保は努力義務であり、実施済みの企業は34.8%です。
ここには大きな違いがあります。
同じ会社で長年働き、そのまま60歳、65歳を迎えて継続雇用されることと、一度会社を離れた人が65歳から新しい仕事を探すことは同じではありません。
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私自身、早期退職後の就労を経験してきました。
そこで感じたのは、年齢が上がるにつれ、それまで培ってきた経験をそのまま生かせる仕事より、警備、清掃、配送、施設管理などのフィールドワークを含め、仕事の選択肢が限られてくる現実です。
こうした仕事は社会に不可欠ですし、そこで生き生きと働いている方もたくさんいます。
しかし、誰もがそれを希望しているわけではありません。
統計上の「働いている人の多さ」と、実際に仕事を探す人が感じる「選択肢の多さ」には、少なからず隔たりがあると私は感じています。
これから中高年の「希望する仕事」は十分に増えるのでしょうか
ここで一度、考えてみたいことがあります。
日本企業が採用しようとしている大卒・大学院卒の新卒求人は年間約75万人です。
一方、日本にはすでに3,600万人を超える65歳以上の人がいて、そのうち930万人が働いています。
もちろん、この930万人が毎年新しく仕事を探しているわけではありません。
現在の勤務先で継続雇用される人もいれば、自営業を続ける人もいます。
ですから、新卒求人75万人とセカンドライフ世代の就業者930万人を単純に比較することはできません。
しかし、これから65歳を超えても働きたい、あるいは働く必要がある人が増えていくことは十分考えられます。
では、それに見合うだけの「希望する仕事」が、企業から提供されていくのでしょうか。
セカンドライフ世代向けの求人はこれから増えるでしょう。
定年も延長されていくと思います。
経験豊富な中高年人材を積極的に活用する企業も増えていくでしょう。
しかし、それが自分の希望する仕事内容、勤務時間、収入と一致する保証はありません。
「働ける仕事がある」ことと、「自分がやりたい仕事を、自分が希望する条件で続けられる」ことは同じではないのです。
企業が仕事を用意してくれることを前提に、これからの人生を考えるのか。
それとも、そうならない可能性も考えて、自分自身でも準備しておくのか。
私は、この違いがこれからますます大きくなると思っています。
中国では年間1,200万人を超える大学卒業者
海外に目を向けると、さらに大きな変化が起きています。
中国では2025年の大学卒業者が過去最多の約1,222万人に達すると見込まれ、若者の就職難が大きな社会問題になっています。
もちろん、中国の若者の就職問題と、日本の中高年就労を単純に比較することはできません。
ただ、一つ参考になることがあります。
「働きたい人が増えれば、それに見合う希望する仕事も同じだけ増える」とは限らない
ということです。
これは若者でも、セカンドライフ世代でも同じではないでしょうか。
だから私は、国や企業の制度が整うことを期待すると同時に、もう一つの選択肢を自分自身で持っておくことも大切だと考えています。
月3万円~5万円なら、「自分で仕事をつくる」という選択肢もある
ここまで読むと、
「では、60代から起業しろということか」
と思われるかもしれません。
そうではありません。
私は、60代から大きな借金をしたり、店舗を構えたり、人を雇ったりして、大きなリスクを取る起業を勧めたいわけではありません。
むしろ逆です。
例えば、年金や貯蓄だけでは毎月あと3万円足りないとします。
月3万円なら年間36万円。
5万円なら年間60万円です。
それなら、再就職だけを選択肢にするのではなく、
これまでの経験、知識、技術、趣味、人とのつながりを生かして、月3万円~5万円程度を生み出す「自分の小さな仕事」を持つ
という方法もあるのではないでしょうか。
会社をつくる必要も、大きな事務所を借りる必要もありません。
最初から月30万円、50万円を稼ぐ必要もありません。
週に何日働きたいのか。
月にいくら必要なのか。
自分には何ができるのか。
誰の役に立てるのか。
そして、自分は何をしていると楽しいのか。
そこから逆算して、自分に合った小さな仕事を考えてみる。
私はこれを「小規模起業」と考えています。
月3万円の仕事がもたらすのは、3万円だけではない
小さな仕事を持つ意味は、収入だけではありません。
人とのつながりができる。
社会との接点が続く。
生活に張りが生まれる。
誰かから「ありがとう」と言ってもらえる。
そして、長年積み重ねてきた経験が、誰かの役に立つ。
会社員時代には当たり前だった「社会との接点」は、会社を離れて初めて、その大切さに気づくことがあります。
月3万円の仕事から得られるものは、3万円だけではないのです。
それは、定年後の「生きがい」にもつながっていくのではないでしょうか。
生涯現役とは、生涯会社員でいることではない
定年延長も、年金制度も、企業の中高年雇用も大切です。
利用できる制度は、利用すればよいと思います。
再就職もいい。
アルバイトもいい。
業務委託という働き方もある。
働かないという選択もあります。
そして、その選択肢の一つとして、**月3万円~5万円を目標にした「小さな起業」**があってもいい。
大切なのは、国の制度や企業の判断だけに、自分のこれからの人生を委ねないことではないでしょうか。
いつかは必ず、会社員としての定年を迎えます。
そのとき初めて、
「さて、これからどうしよう」
と考えるのではなく、50代、60代のうちから少しずつ準備しておく。
何歳まで働きたいのか。
月にいくらあれば安心なのか。
自分の経験を誰のために役立てたいのか。
そして、残りの人生をどう生きたいのか。
生涯現役とは、生涯会社員でいることではありません。
国や企業が答えを出してくれるのを待つのではなく、自分の人生を自分自身でデザインする。
そのために、今まで培ってきた経験や知識をもう一度棚卸ししてみる。
そこから「自分の小さな仕事」が見つかるかもしれません。
このコラムが、定年後の仕事や収入だけではなく、**「これから自分はどう生きたいのか」**を考える、小さなきっかけになれば幸いです。
▶「これからの生き方を考えたい方へ」正解は一つではありません。
だからこそ、自分に合った形を見つけることが大切です。
小さな一歩が、これからの安心につながります。無理な勧誘は一切ありません。
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