先進7か国(G7)の高齢者就業率から考える、年金・雇用・小規模起業を組み合わせたセカンドライフ
あなたは65歳になったとき、働くか、仕事を辞めるかを自分で選べるでしょうか。
それとも、生活費を補うために、働き続けなければならないでしょうか。
「65歳になれば仕事を離れ、年金で暮らす」。かつて一般的だった老後のイメージは、すでに過去のものになりつつあります。
2024年、日本の65歳以上の就業率は25.2%でした。これは、働く意思のある人だけを分母にした割合ではありません。65歳以上の全人口のうち、実際に仕事に就いている人の割合です。つまり、日本では65歳以上の4人に1人が、何らかの仕事をしていることになります。
しかも、この25.2%には、就業率が低くなる80代、90代も含まれています。65~69歳に限れば半数を超え、70~74歳でも3人に1人以上が働いています。今の日本では、65歳は「完全に仕事を終える年齢」ではなくなっているのです。
フランスの約6倍。G7で際立つ日本の高齢者就業率
先進7か国(G7)と比べると、日本の高齢者就業率の高さがよく分かります。統計年や集計方法には若干の違いがあるため概数ですが、各国の65歳以上の就業率は、おおむね次のようになっています。
| 国 | 65歳以上の就業率・概数 | 特徴 |
| 日本 | 25.2% | G7で突出して高い |
| アメリカ | 18%前後 | 年金・資産形成と就労を組み合わせる人が多い |
| カナダ | 14%前後 | 段階的引退やパート勤務も比較的多い |
| イギリス | 11%前後 | 年金受給年齢の上昇も就労に影響 |
| ドイツ | 9.3% | 公的年金を軸にしつつ高齢就労も増加 |
| イタリア | 5%前後 | 家族や地域との生活を重視する傾向 |
| フランス | 4.3% | 公的年金による引退生活の比重が大きい |
※各国の数値は公表時期や集計方法が異なるため概数。日本は総務省「労働力調査」および内閣府「令和7年版高齢社会白書」を参照。海外は各国統計および国際機関資料を参照。
日本の25.2%は、フランスの約6倍、ドイツの約2.7倍です。
ただし、この差を「日本人は働きすぎ」「海外の高齢者は悠々自適」と単純に捉えることはできません。国によって年金制度、退職年齢、雇用慣行、自営業者の割合、生活費、仕事に対する価値観が異なるからです。
高齢になってから働く理由も、生活費のためだけではありません。収入に加えて、健康維持、生きがい、社会とのつながりを求めて仕事を続ける人もいます。働ける間は社会に関わりたい、誰かの役に立ちたいという選択は、前向きなセカンドライフの一つです。
それでも私は、65歳以上の全人口の4人に1人が働いているという数字に、少し恐ろしさを感じます。
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「働ける老後」と「働かざるを得ない老後」は違う
問題は、65歳を過ぎても働くことではありません。
働くかどうか、何日働くか、どのような仕事をするかを、自分で選べるかどうかです。
退職後に「年金だけでは生活費が足りない」と気づいてから仕事を探しても、自分が希望する仕事が見つかるとは限りません。60歳以降は非正規雇用の割合が大きく上昇し、65~69歳では、役員を除く雇用者のうち非正規の割合が男性67.8%、女性83.2%に達しています。
もちろん、短時間勤務や負担の軽い仕事を自ら選んでいる人もいるため、非正規雇用がすべて悪いわけではありません。しかし、賃金、体力、健康、通勤時間などの条件を考えると、年齢を重ねてからの仕事探しは、選択肢が限られやすいのも現実です。
ようやく見つけた仕事が体力的に厳しければ、長く続けることはできません。病気やけがで働けなくなれば、仕事による収入が突然途切れる可能性もあります。
「働きたいから働く」のと、「働かなければ生活できない」のとでは、同じ就労でも意味がまったく違います。
目指したいのは、働かなくて済む老後だけではなく、働くかどうかを自分で決められる老後ではないでしょうか。
50代の今、三つの質問に答えられますか
もし今、次の三つの質問に答えられなければ、50代から準備を始める意味があります。
- 65歳以降、年金だけで毎月の生活費を賄えるでしょうか。
- 会社を離れた後にも、収入につながる経験や技術があるでしょうか。
- 仕事を辞めた後も、社会とつながる場所を持っているでしょうか。
預貯金の額を確認するだけが老後準備ではありません。毎月必要な生活費、受け取れる年金、住宅費、医療費を把握する。そして、お金だけでなく、自分の経験、技術、人とのつながりを棚卸しすることも重要です。
これから50代を迎える人、今まさに50代にいる人にとって大切なのは、65歳になってから慌てて考えるのではなく、現役のうちに選択肢を増やしておくことだと思います。
56歳で早期退職。私は準備に時間がかかりました
私自身、56歳で33年間勤めた会社を早期退職しました。しかし、退職直後から新しい方向へ迷いなく進めたわけではありません。
退職後の約1年半、これから何をするのか、何ができるのかを模索しました。収入がなくなったこと以上に、会社という居場所と役割を失い、自分の進む方向が定まらないことに戸惑いました。
今振り返れば、その時間も私には必要な遠回りだったと思います。試行錯誤を重ねたからこそ、その後の仕事や社会貢献へつながりました。
一方で、会社員として安定した収入があった50代のうちに、会社の外でできることを小さく試しておけば、退職後の迷いはもう少し短くできたのではないかとも感じます。
退職金や貯蓄があっても、「次に何をするか」が自動的に見つかるわけではありません。会社員時代の肩書や人脈が、退職後もそのまま通用するとも限りません。
だからこそ、50代は会社を辞める準備期間ではなく、会社に在籍しながら次の可能性を試す期間だと考えています。
50代は、本業を続けながら「小さく試す」
50代で、いきなり会社を辞めて起業する必要はありません。むしろ大切なのは、給与という安定した土台があるうちに、自分の経験や得意分野が誰かの役に立つかを確かめることです。
週末だけ相談を受けてみる。小さく商品を販売してみる。資格や経験を生かして、月に数万円の仕事をつくってみる。地域活動や副業を通じて、会社の外に人とのつながりを持つ。
最初から法人を設立したり、店舗を借りたりする必要はありません。副業規定などを確認したうえで、失敗しても生活に影響しない範囲から始めれば、やめることも、方向を変えることもできます。
小規模起業の目的は、最初から大きな利益を上げることではありません。会社を離れた後にも、自分で仕事をつくれる可能性を育てることです。
自分の経験を必要とする人はいるか。お金を払ってもらえる価値があるか。無理なく続けられるか。自分の体力や家族との生活に合っているか。こうしたことを50代のうちに確かめておけば、定年後の選択肢は大きく広がります。
年金・雇用・小規模起業を組み合わせる
これからのセカンドライフでは、一つの収入源にすべてを頼らないことが重要になると思います。
年金を生活の土台にする。週2~3日は雇用の仕事で安定収入を得る。残りの時間で、無理のない小規模起業や社会活動を続ける。このように複数の小さな柱を組み合わせれば、一つが不調になっても生活全体が揺らぎにくくなります。
会社員時代と同じ収入を、小規模起業だけで得ようとすれば、売上を追うことが最優先になり、時間にも気持ちにも余裕がなくなります。しかし、年金や雇用収入が生活を支えていれば、起業だけで生活費のすべてを稼がなければならないという焦りを減らせます。
もちろん、小規模であっても起業には失敗のリスクがあります。だからこそ、大きな借入、高額な設備、重い固定費をできるだけ持たず、「失敗してもやり直せる規模」で始めることが大切です。
大切なのは、起業すること自体ではありません。年金、雇用、小規模起業、地域活動などを組み合わせ、自分に合った働き方と社会との関わり方をつくることです。
4人に1人という数字を、自分の人生を考えるきっかけに
65歳以上の全人口の4人に1人が働く日本。
この数字を、ただ恐ろしい現実として見るか、50代から人生設計を見直すきっかけにするかで、その後は変わります。
50代は、現役で働ける最後の時期ではありません。これまで積み重ねてきた経験を土台に、次の働き方を小さく試せる大切な準備期間です。
目指したいのは、いつまでも働かされる人生ではなく、年金を受け取りながら、働く日数、仕事の内容、社会との関わり方を自分で選べる人生です。
その選択肢は、退職の日に突然生まれるものではありません。
今の仕事を続けながら始める、小さな一歩。その積み重ねが、将来の「働かなければならない」を、「自分らしく働く」に変えていくのだと思います。
まずは、65歳以降の生活費と年金額を確認し、会社の外で生かせる経験や技術を書き出してみてください。まだ起業するか決めていなくても構いません。自分にできる小さな一歩を考えることが、選べるセカンドライフの始まりになります。
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だからこそ、自分に合った形を見つけることが大切です。
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